愛しい

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「――――……」  いつも、誰に対しても、とても綺麗に笑う、その唇。  触れると柔らかいそれを、自分のだけにできてるみたいで、熱くなる。  後頭部に手を這わせて、自分の方に引き寄せる。  後ろに退けないように、深く。 「……ん……っふ……」  漏れた声に少し目を開けると、伏せた瞼が少し震える。愛しくてしょうがなくて、ぐいと背を抱き締めて、片手で頬に触れた。 「……っ……ン……ぁ……み、か……」 「――――……?」  呼ばれた気がして、見下ろすと。  すでに涙ぐんだ瞳と、視線がぶつかる。  なんかもうすでに、ものすごく可愛いんだが、どうしたら……。 「……呼んだ?」 「ん……呼んだ……」  は、と息を整えてから、オレを見上げてくる。 「――――……あのさ、三上」 「……うん?」  可愛くて、涙を拭い、そのまま、頬にキスする。 「……くすぐったい、かも……」  クスクス笑う先輩に――――……正直、限界。 「寝室、いこ?」 「うん」  即答で頷いてくれるので、手を引いて、一緒に寝室に向かう。 「電気――――……つけます?」 「……えーと……小さいのが良いかな……」 「ん」  オレンジの一番小さなライトだけ。  お互いを見るには十分。  ベッドに腰かけた先輩の隣に座って、腕を掴んでキスを再開しようとした瞬間。 「あ。さっき、何か言おうとしました?」 「うん、した」 「なんですか?」 「あのさ、三上」  じっと見つめてくる視線に、止まった。 「少し話して、良い?」 「……?」  話す。何だろ。思いながら頷くと、少し間をおいて、オレを見上げる。 「……あのさ」 「うん」 「……三上、オレと本気で付き合いたい?」 「――――……当たり前ですけど」 「…………オレさ」 「ん」 「……三上のこと、好き、だと思う」 「――――……」  好きって思ってくれてるのは知ってるけど。  こんな時に、あえて言う意味、は。 「……オレ、三上とこうなってから……ずっと、好きだと思ってる」 「――――……」 「……あと、もしかしたら、こうなる前から……なんか……好きだった、かもと、思い始めてて――――……」 「――――……」 「……だから……もし、三上が……ほんとにオレで良いなら……」 「――――……」  話途中だったけど。抱き締めてしまった。  そのまま、顎に触れて、唇を塞ぐ。 「――――……っ……」  先輩の手が、オレの腕に触れる。 「――――……ン、ふっ……っ……」  音が立つ位、激しく絡めて、ぐい、と抱き寄せる。 「……っ……は……」  先輩の口の中、舐めつくすみたいにキスしてから、舌を吸って、噛む。 「ん、ンっ……」  びく、と震える。唇の間で、はあ、と熱い吐息が漏れる。 「……っん……」  こらえきれないように、唇の間で漏れる声が、甘くて。  なんか、ほんと――――……ヤバい。 「……陽斗さん」 「――――……っ……?」  キスを離して名を呼ぶと、ふ、と息をつきながら、軽く握った手で唇を押さえてる。  顔、真っ赤。 「もし、じゃないからね」 「……??」  頭ちゃんと働いてないのか、不思議そうな顔をされる。   「……もしオレが陽斗さんで良いなら、とか言ったでしょ」 「――――……あ、うん……」  なんだか恥ずかしそうに、視線を逸らされて。  オレは、先輩の顎をとらえて、自分の方に向けさせた。 「……言い方おかしいんだよね」  苦笑いしか浮かばない。 「……オレは、陽斗さんが良いってば」  そう言うと、言葉に詰まったみたいに一度、黙ってから。 「三上……」 「……うん?」 「……お試しとかじゃなくて――――……」  じっと、オレを見上げて、それから。ぎゅ、と首に腕が回った。 「ちゃんと、付き合いたいんだけど……」 「――――……陽斗さん……」 「……本当に、いい?」  なんだかもう――――……聞き方が可愛くて。  少し離させて、顔を見つめる。 「いいに決まってるし……ていうか、オレはずっと、そうしたいって言ってるし」  そう言ったら、めちゃくちゃ照れたみたいに、ふわ、と微笑んで。  うん、と頷く。     もーマジで無理。  可愛い。  そのまま、ぎゅ、と抱き締めた。 (2022/10/9)
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