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もう先輩の発言が、オレにとっては完全にヤバすぎる。
なので、とにかく早く帰ろうとだけ伝えて、手近な弁当屋に入って適当に色々購入。そのままオレのマンションに直行した。
玄関に入って二人きりになると、なんだかもう我慢できなくて。
荷物を玄関に置くと、引き寄せて抱き締めてしまった。
「――――……」
黙ったまま、後ろに手を回してくれるので、しばらく抱き締めてから。
少しだけ離して、先輩の顔を見下ろすと、それに気づいて、オレをまっすぐ見上げてくる。
「――――……」
なんだか少しだけ、微笑んでる。
……なんか、この人に触るのを、ずっと我慢してた気がしてくる。
顔を傾けて、見つめ合ったまま、近づく。
ゆっくりゆっくり、唇を重ねる。
少し伏し目がちな瞳と見つめ合ったまま。
少し、先輩が笑う気配がする。
「……なに?」
ちゅ、とキスしながら、聞くと。
「……目、見ながらとか――――……恥ずかしいなぁ、と思って」
触れた唇の間で、先輩が笑いながら、言う。
――――……照れた感じが、可愛くて。マジで困る。
「何かオレ……もーこのまま、離したくないんですけど……」
ぎゅううと、抱き締めたまま、そう言うと、先輩はとんとん、と背中を叩いてきた。
「でも……お腹空いたし……なんか飲みたい……し……あと、シャワー浴びて、綺麗にしたい……三上もお腹空いてるだろ?」
「――――……ですけど……」
それ、全部、オレも、分かってる。
分かってるけど、今離せないだけで。
「……ごめん、あと少し……」
ぎゅう、と更に抱き寄せると。
先輩は、少しして、オレの腕の中で、くす、と笑った。
「……あのさ……三上……」
「――――……」
じっとオレを見つめて。
それから、少しだけ、首を傾げた。
「あのさ……今日、一回くっついたら、離れたくないんだよね」
「――――……は?」
「……だから夕飯とか……全部すること済ませてから、がいい」
「――――……」
とにかく、ただただ、きつく抱きしめてしまう。
「くるしーよ……」
クスクス笑う先輩。
もうなんか。理性、総動員で止めるしかない。
「……陽斗さん、先に、シャワー、浴びますか?」
「良い?」
「はい」
「じゃあ浴びてくる」
オレが少し力を抜くと、埋まってた姿勢を起こして、見上げてくる。
「すぐ出てくるから」
「はい。あ、服、もっていくから。スーツ、かかってるハンガーにかけといてくださいね」
「うん、分かった」
言いながら、先輩が、バスルームへと消えていく。
思わず、しゃがみこんで、頭、抱える。
…………ああ、もう、なんだかな、もう――――……。
一回くっついたら、離れたくない、だって。
何なんだそれ。もう。
もう、全部終えたら、絶対離さないから。
ガシガシと頭を掻きながら、ふ、と気合を入れて立ち上がる。
……絶対、ヤバい。あの人。
――――……狙ってなさそうなのが、絶対ヤバい。
もう絶対、オレのにして、
絶対危ないとこ、行かせないから。
すごい可愛いけど。
可愛すぎて、辛い。とか。はーもう。マジで。もう。
なんかブツブツ言いながらオレは、買ってきたものをリビングに置いた。
(2022/9/3)
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