愛しい

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   「陽斗さん……」  ぎゅーと抱き締めると、ふ、と腕の中の体が揺れて、笑ったのが分かる。 「三上、シャワー浴びた?」 「浴びた」 「……いー匂いする」 「――――……」  くん、と匂いを嗅がれてそんなこと言われると。  ……なんか、すごく、煽られる。のだけど。  でもなんだか、ものすごくゆっくりな感じで幸せそうなので、まさか襲い掛かる訳にもいかない。……というか、わりとついさっきまで色々していたので、それも無理だなと思う一因だけど。  ……でも、良い匂い、とか。言われると。……腰に来る、つーか。  ……なんかオレ。もしや、付き合ってからの方が、忍耐力を鍛えられるのではないだろうか。 「……すっげーだるいんだけど……」  オレの腰に、腕を回したまま、陽斗さんはオレを見上げて、そして、ふ、と微笑む。 「今日世話してもらっていいんだよな?」 「……っしますよ、世話。なんならずっとしますよ」  気だるげな感じの、陽斗さんの、ゆっくりな口調が可愛すぎてヤバい。  ……どーしよ、これ。  うろたえて、ずっと世話すると言ったオレに、陽斗さんは楽しそうにクスクス笑った。 「何、ずっとって。今日だけでいいよ」  そのまま、また、ぽす、とオレの肩辺りに顔をうずめる。 「だるい……」  言いながら、また、クスクス笑ってる。 「……あんなに続けられると思わなかった」 「あー……すみません……」  確かに、自分でもしつこかったなと思って、苦笑しながらそう言うと。 「元気だなー、三上……若いからかなあ??」  また、見上げられるけど。  ――――……さっきからもう、なんかだるそうなその視線も、口調も、喋れば喋るほど、可愛く見えて。なんか、直視できない。 「なんか、三上……ドキドキ、すごくないか?」  オレの心臓に近いとこにくっついてる陽斗さんに、バレたみたいで、ぴと、と胸のあたりにくっつかれる。 「――――……ッ」   人の気も知らないで、なんだかますます胸に耳を寄せてくる。 「あんなに色んなこと、してきたくせに、くっついてるくらいで、こんなんなる?」  からかうように言われて、見つめられて。  なんかもう……。 「みか――――……」  我慢できなくて、その唇を、塞いでしまった。  特に抵抗はない。キスしても見つめ合っていたままの瞳が緩んで、そのまま、ゆっくり伏せられた。腰に巻き付いてた手は、少し上がって、背中に抱き付いてくる。  軽くキス……のつもりが、ついつい、深く重ねてしまう。  陽斗さんの舌を絡めとって甘噛みすると、ぴくっと動くのが可愛い。そのまま後頭部を押さえて、陽斗さんの口内に深く舌を挿し入れた。 「……ん、……っん ん ……」  唇を外して、ふは、と息を吸い込む。 「――――……き、つ……」  その言葉に、ごめんね、と笑ってしまう。 「……でもなんか……可愛すぎると、またベッド、連れ込むよ?」 「…………」  そう言ったら、陽斗さんは、キスで赤くなった顔を更に赤くして。 「……まだ、できンの?」  と聞いてくる。 「……多分、オレ、ずーっとできると思う」  そう言うと、むむ、とオレをちょっと睨んで。 「三上、ヤバ……っつか、今日は労わってくれるって言ったし」  若干口を尖らせて、そんな可愛い感じでまた言うので。  ちゅ、とその唇に口づけた。 「労わる気満々だからしないですよ。大丈夫、もう今日、全部オレに任せて」  そう言うと、陽斗さんは楽しそうにオレを見上げて、「任せる」と笑った。 (2023/2/17)
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