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…目を覚ますと、暗闇が広がる。
ゆっくりと起き上がり、カーテンを引いた。
ぶる、と震える。
寒さがしみた。
「…ああ、そうか」
上着を羽織り、下へ降りる。
台所に灯りか付いていた。
「あれ?パパ、今日は休みじゃなかったっけ」
「うん。ミオ、今日は弁当持参だろ?」
「……ありがとう」
まだ慣れない手つきで、弁当箱にひとつひとつ、おかずを詰めてゆく。
ー…私は、いつも同じ夢を見る。
゛おやすみ゛で終わった母親。
『じゃあね』が最期になった親友。
…夢は、災害の前日だ。
母親と弟、親友シホは、もう、この世界にいないのだ。
…私だけ、助かった。
父親はたまたま不在だった為、捲き込まれなかった。
…あれから、数年たつ。
私は、今日も明日も、同じ夢を見るだろう。
母親が作る美味しいカレーの味と、親友との他愛ない会話を、楽しくあっけらかんに、感じるのだ。
『完』
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