40人が本棚に入れています
本棚に追加
4
『ごめん瞬くん。今お姉ちゃんが入ってるから、私がお風呂入れるの20時半くらいになりそう』
「僕が調整できるから問題ないよ。じゃあお風呂上がった後にやる予定だった宿題の時間を前にずらそう」
『そうだね。了解』
計画は早速次の日から行われた。
僕と彩さんはこまめに連絡を取り合い、互いのタイムスケジュールを重ねた。起床時間、朝食メニュー、昼休憩の過ごし方、テレビ番組など、流石にどうにもできない部分もあったが可能な限り僕たちはお互いの生活スタイルを寄せ合った。
『お姉ちゃんがお風呂から上がった! 予定通り20時半でいける!』
スマートフォンの画面に、遠く離れた場所にいる彼女の言葉が表示される。
今の時代は距離なんて関係ないのかもなあ、なんて思いながら『OK。準備しとくね』と返事を指先で送った。
こんな生活を僕は割と楽しんでいた。彼女と同じことを考え、彼女と同じ時を過ごす。
まるで同棲してるみたいだな、なんて。
『22時には上がるからね!』
「え、お風呂長くない?」
『うそ、普通そんなもんじゃないの?』
「僕だいたい15分だけど」
『……瞬くんって、もしかして身体洗わない派?』
「どんな派閥だよ」
彼女の不本意な認識を改めつつ、合わない価値観はお互いに歩み寄ることで納得することにした。
急に僕の最近の入浴時間が長くなってきたことに気付いた母が「瞬も思春期なのね」と言っていたので「そうじゃない」とだけ答えておいた。
その答えとは裏腹に僕の肌ツヤはどんどん増していくので説得力は皆無だったが。
最初のコメントを投稿しよう!