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1.ドロだらけのダイヤモンド
「ピンポーン」
こんな夜中に誰だろう?時間は午後10時を過ぎていた。
「キャー!レイさんどうしたの?」
玄関に出た優菜が叫んだ。「レイがどうした?」
とオレも叫びながら行くと、そこにドロまみれになったレイが立っていた……。服もあちこち破れているようだ……。
「とにかくシャワーを……。こっちに入ってレイさん!」
優菜が風呂場に案内した。ここから先にはオレは行けないよな……。
「レイさん、脚に擦り傷があるよ。あとで傷薬塗ってあげる」
「ウン……」
どうも何かのショックでレイは一人で体を拭けないみたいだ……。優菜が拭いてあげている様子だった。しかし、気になるな……。
優菜の服を借りて出てきたレイは、少し顔色が青白く見えた。
「大丈夫か?レイ?」
とオレは言ったが、レイはうなずいただけだった。
「シロちゃんに……」
「ん?シロがどした?」
「シロちゃんに、私を見せてください……」
「わ……わかったよ。安心してろ」
相当話しづらいんだな。ますます気になった。
うちの同居人というか、同居猫は2匹いて、どちらも未来から来ている。クロはオレと頭の中で話せるし、シロは人の意思を読む能力を持っている。レイもこのことは知っているから、シロを呼んだのだろう。
「シロ頼むわ」
レイの前に座らせた。普段なら瞬時に読み取るシロだが、今日は慎重に読んでるのか、時間がかかっている。オレはクロが口を開くのを待った。シロが読んだらクロに伝えるからな。
「ここからは私が説明しますね」
とクロが言った。レイの体験した内容を聞こう。オレはクロからの思考を優菜達に同時通訳してやった。
今日は休みだったこともあり、実家でのんびりしていたら、父と母から昼食を食べに行こうと誘われたんです。わりと有名なお店だったので、私も行きたかったからちょうど良かったと思って。
ところが店に着くと奥の方に案内され部屋に入ったら先日のお見合い相手がいたの。私はすぐ飛び出そうとしたら母から「先日失礼をしたから、今日はお詫びなのよ。付き合いなさい」
と釘を刺されたの。私も子供じゃないし、食事だけならと諦めたんです。
父は「先日会っているから名前はもう知っていると思うが、もう一度紹介しておこう。山田一彦君だ」
その山田という人は立ち上がり軽く会釈し、「山田です」
と言った。前にも思ったが、眼鏡の奥の瞳は、まるで爬虫類、ううん、ヘビを思わせる印象で、今にも二本の舌がチロチロ出そうなイメージの男だった。まるでヘビ男だ。
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