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2.本部長
翌朝……
ああやって昨夜タンカを切ったものの、刑事から離れたオレに何ができるだろうか……。
しかし、レイをこんなに苦しめた男を許すことなどできるはずはないよな。オレはひとつだけ考えがあった……。しかし、この方法はな……県警のトップ。本部長に話を持っていかなくてはならないのだが……。
しかし、我々の組織というものは段階を踏まないとマズいことも当然あったから、まずは本署の刑事課のほうに電話を架けてみた。出たのは以前の上司の係長である。
「実はこれこれこうで、こんなウワサがあるんです」
「で、証拠は?」
「し……証拠はこれからなんですよ……」
「そんなんじゃ誰も動かないぞ。漠然とした話では、我々は動けんのだ」
予想通りの反応だった……。仕方ない、最後のカードを切るか。本部長に直接電話を架けるなんて、できるわけがない。総務課内秘書係に架ける。
「私、N署の岡野と申します。夏に表彰の時にお邪魔したことがありますケド、本部長いらっしゃいますか?」
「アポイントメントはございますか?」
この声優さんのような声、たぶん、美人秘書さんの声だろう。
「い……いえ、アポはないのですが、ご報告がございまして……」
やはり組織のトップに突然話すなんてのはムリだったか……。
「事前にアポをお取りに……ぁ、少々お待ち下さいませ……」
電話が保留となった。今オレがやろうとしていることは、組織としてはあり得ないことだ。しかし、本署がとり合ってくれないから、しかたなく……「お待たせいたしました。本部長がお話しになるそうですので、お繋ぎいたします……(カチャ)……」
「やあ、岡野君どうしたんだい?よく電話をくれたね」
まるで友人から電話をもらったような反応だった。
「イ……ぃエ、申し訳ゴ……ございません……実はカクカクシカジカ……という訳なんです。ご承知のとおり、証拠は何一つありません。うちのシロ、いえ、猫がそう読んで私に知らせてきたのです……」
「わかってますよ、オカコーさん。それで十分じゃありませんか?」
「へっ?!」
まさかと思っていたため、マヌケな声が出てしまった。
「私はそういう大きな事件を解決してくれると思って、君たちに期待していたのですよ。すぐに捜査本部を立ち上げましょう。おーい、刑事部長と捜査二課長を呼んでくれたまえ……」
なんか大ごとになってるゾ……刑事部長に捜査二課長?なんだそりゃ?雲の上の人たちじゃないか!
その日の昼過ぎ、電話がかかってきた。署長からだった。
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