3.秘境の温泉

2/3
前へ
/11ページ
次へ
「ラジャ!」 「何かあったらクロに言ってくれよ。呼んでくれるから」 とオレは言って山に入って行った。  この辺の山は、人の手が入ってないところがほとんどなので、(いばら)も多いし、何より毒虫などもいる。レイにやらせるわけにはいかないよな。オレは念のため、クロに話しかけてみた。テストみたいなものだ。 「クロー、聞こえるか?」 「ハーイ、大丈夫。感度良好!」  クロとの会話ができるのは、無線機よりも当てになるよな。そういえばこの辺は無線機もなかなか入らないところだった。こんな場所なのに、クロと普通に話せるのは奇跡的なことに違いない。  山で両手にいっぱい薪を集めたので、クロに「一度戻るから」 と伝えて薪を置きに戻った。レイは既に水を貯め終わっていて、暇そうだったので、オレは 「レイ、オレと一緒に海岸の流木を集めに行こうか」 と誘ったら、嬉しそうについて来た。藪と違って海岸は石ころばかりの浜なので、安全だろう。  海岸に降りたところから拾っていくのは合理的ではない。なぜなら、一番遠くまで行って、また戻って来ないといけないからな。その間ずっと荷物になる。だから、一番遠くまでは手ぶらで歩く。レイと二人だから、当然手を繋いで歩くことになるな。えへへ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加