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奏多の部屋で、初めて三人で寝る。潮の匂いのシーツの上で。
灯りを全て消して、窓から射す月明かりだけで探り合う。
彼の愛撫は焦らしながら、笑ってしまうくらいに公平を保っていて。私たちは交互に声を挙げる。波が寄せたり引いたりするのと同じ。遊びながら。
これはまるで私の大嫌いな共有。なのに、おとなしく待ってしまう。胸が苦しくて、淡くて、ただただ人形になって。
ね、さすがに差し込むのは交互には無理ね。
私は夕映さんに譲ることにして、立ち上がってキッチンに水を飲みに行く。
そのままデッキに出て、裸のまま、海を眺める。私はあまり泳げない。
ダダッ、ポーンとくぐもった音が聞えてくる、夏の終わり。
遠くの雷鳴なのか、ここからは見えない打ち上げ花火の音なのか。音がしない時間に耳を傾けて確かめたくなる。
裸足のまま家を出た。
月が雲に隠れてしまったせいで、まだ目が慣れない。
思ったより坂道の角度がキツクて、速度が上がって足がもつれる。
いつしか、つかんだ足裏の感触で、砂浜に出たことを知る。
これが生きているという感触だ。のせて、ほろり。私の重みに耐えかねて、砂が沈む。
さっき降った雨が沁み込んで、足が重たい。今きっと私だけが踏みしめている地続きの砂浜。一人占めの感覚が心地よくて、震えが来る。
駆け抜けてきた疾走感。若さゆえの過ちの多さ。
最後に石につまづいて、倒れた。
砂だらけの自分を丸ごと洗い流せたらと波の方に近付くけれど、清めるどころか、一波一波が通って来た人のようで、余計にえぐい気分になる。
この身体と一緒に生きていくしかないんだ。丸ごと。自分ごと、汚れたまま。洗っても落ちはしない。
波まであと少し。月が顔を出し、海を照らし始めた。
暗闇に代わって、突然の薄白の世界。波がふざけたフリルのように近づいてくる。
白いのは波の花。手で掬ったら消えてしまう儚い泡。
痛っ。
ちくりとしたのは貝殻か、起こしてしまった蟹の子のハサミか。硝子か、身体の奥か。
今、私の愛している人たちは一つになっている。執拗に繋がっている。
感じながら、一方で私を探している。手に入らない方への執着で心を締め付ける。全身で家から放出されたそんな気配を感じるんだ。
きらきら、月に照らされて、夜の海が私を呼んでいる。
私は一歩ずつ裸のまま近づき、奏多の代わりに海水が身体の奥に入ってくるのを感じていた。
遠くから声が聴こえてくる。私のことを呼ぶ、二人の声。
18才。私は確実に何かを喪失していく。それはもう取り返しがつかない。
誰もが通るのに、誰もが気づかずに、過ぎていくその瞬間を。
夕映さん、あなたの熱を帯びた瞳に魅せられて。
奏多、あなたの射貫くような強い瞳に、私は自分を晒されていく。
<fin.>
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