5人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「体使って、モデルに抜擢されたらしいよ」
私に構うのに飽きてきたクラスメイトたちは、そう噂した。まるで私の行動を監視したかのように。
噂を流したのは相川君なんだろう。その目は、私を手に入れたいと伺ってきていたものね。
まただ。周りの悪意しか感じられなくなる。
彼ならもしかしたら、奏多の家にまで付いて来た可能性だってある。
開け放しの窓から、私たちの絡まる肢体を観察していてもおかしくはない。見られていたのなら犯されたも同じ。
きっと毎晩、彼の夢の中で私は彼を誘惑し、私から望んで抱かれていることだろう。誰しも都合よく相手を牛耳ることが可能な、その頭の中で。
ね、来て。私をすきにして。そう彼の中の私は恥じらいながらも大胆に誘うのだろう。
私の分裂。まるで派遣された私。
それを不快と思うか、思わないかは、女によってきっと違う。
空想の上で抱かれたところで、私は一片も減りはしない。寧ろ、熱を帯びた視線が私を裸にするのを、面白おかしく見ている。
私と言う人間は、どうしてこうも冷めているんだろう。冷静を装っているんだろう。
その実、いつだって喪失感でいっぱいで、欠けていくピースを必死で埋めないとやっていけはしないのに。
平気なはずがないじゃないか。それでも。
自分、自分、自分ばかり。
誰かのことを想って、誰かのために生きたことがない。これからも、この先も。
最初のコメントを投稿しよう!