* 奏多 *

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「体使って、モデルに抜擢されたらしいよ」  私に構うのに飽きてきたクラスメイトたちは、そう噂した。まるで私の行動を監視したかのように。  噂を流したのは相川君なんだろう。その目は、私を手に入れたいと伺ってきていたものね。  まただ。周りの悪意しか感じられなくなる。  彼ならもしかしたら、奏多の家にまで付いて来た可能性だってある。  開け放しの窓から、私たちの絡まる肢体を観察していてもおかしくはない。見られていたのなら犯されたも同じ。  きっと毎晩、彼の夢の中で私は彼を誘惑し、私から望んで抱かれていることだろう。誰しも都合よく相手を牛耳ることが可能な、その頭の中で。  ね、来て。私をすきにして。そう彼の中の私は恥じらいながらも大胆に誘うのだろう。  私の分裂。まるで派遣された私。  それを不快と思うか、思わないかは、女によってきっと違う。  空想の上で抱かれたところで、私は一片も減りはしない。寧ろ、熱を帯びた視線が私を裸にするのを、面白おかしく見ている。  私と言う人間は、どうしてこうも冷めているんだろう。冷静を装っているんだろう。  その実、いつだって喪失感でいっぱいで、欠けていくピースを必死で埋めないとやっていけはしないのに。  平気なはずがないじゃないか。それでも。  自分、自分、自分ばかり。  誰かのことを想って、誰かのために生きたことがない。これからも、この先も。
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