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因果
風が吹けば桶屋が儲かる
現代の科学や現代の人倫、動物愛護の精神と照らし合わせると、大きな声で人前で話すのは、最早はばかられる内容なのかもしれない。荒唐無稽な笑い話にしては現代の常識のグレーゾーンを辿っていくストーリーだけれど、実は私はこの話が嫌いではない。
誰一人として検証できないところで、風と桶屋との因果の流れがきっと少しはあったかもしれないとホントに思う。そう思うと、今ここにいる私とまったく見知らぬ誰かとのつながりが感じられる。心が温かくなる。
地球に住む人、否、人だけに限らず、生きとし生けるもの及び無生物は、濃密な大気が各々の間を埋めることによって全てつながっている。
それならば、私の一挙手一投足が、どこかの何者かに何らかの影響を与えていない訳がない。そんな風に思う。
「へっくしょん」
私が今した一回のくしゃみが、因果のドミノを伝い伝って、異国の若い男女の唇同士を引き合わせる可能性を、誰一人として否定できないだろう。
否定できない限り、可能性はある。
私のくしゃみだって、そもそもどこかの砂漠の国に人知れず咲いた、小さなサボテンの花を原因とするものかもしれない。
「へっくしょん」
それより、体、冷やしたかな。
「大丈夫?」
「うん。お風呂入りたいな」
「もうすぐ止みそうだよ」
「うん」
私はあの日、夕立にあった。
夕立にあったから、凸筒君と付き合うようになった。
それは不思議な因果の流れだ。
そして、私は再び今日、凸筒君と一緒に夕立にあったのだ。
「夕立になると。ね、凸筒君」
「え?」
「夕立になると、今度は私たちに何が起きるのかな」
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