ゲーム開始

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「ごめんなさいね、こぉんの馬鹿息子がお粗末なものを見せてしまって」 「大丈夫です。私3歳の弟がいるので」  どういうことだ、そういうことだなコノヤロウ。 「あら、ならよかったわ」  いや、よくねーわ。仮にもあんたと僕の息子だぞ。 「はい、ちゃんと責任は取ってもらうので大丈夫です」 「そう、ゆっくりしていってね」 「ありがとうございます」 「あ、そうそう。あんたちゃんとお礼言っておきなさいよ」 「お礼?」 「あんたが入院している間、プリントを届けてくれてたんだから」 「へー」 「へーじゃないでしょまったくこの子は」  またガミガミ始まったが、たぶん村越さんがいる手前そう長くは言われなかった。その後再度ゆっくいしていってねと息子が責任を取らされる時間をしっかりと確保させた母親は部屋を出ていった。  で、だ。じーっと僕を凝視しているたぶん村越さんの眼光は鋭い。母親から借りている服は当然のように中和してくれない。きっと先端恐怖症だったら目を逸らしているくらいだ。いや、違くてもそらすけど。 「……写真」 「……ん?」 「撮ってたでしょ、公園で」  何のことだろうか。僕は盗撮する趣味なんかない。もし桃太郎と鬼が秘密裏に賄賂を渡す現場に居合わせたのなら写真を撮るだろう。それか乙姫と亀が浦島太郎を狙っての犯行を企てている現場とか。そんな悪いこと……あーそういうことか。きっと僕がカメラ機能を使って拡大して見ていたのを、写真を撮っているのだと勘違いしているのだ。 「とぼけないで、公園で私が悪口書いているところの写真撮ったでしょ」 「悪口って自覚あるんだ」 「あたりまえでしょ。もし悪口じゃないのならあなたを『クソ猿』って呼んでる」 「どうせ裏で呼んでるだろ」 「あたりまえでしょ。むしろ呼んでない人なんているの?」 「家族」 「そうだといいね」  もし呼ばれていたらへこむ。それこそ部屋に閉じこもってトイレとご飯のときにしか出ないような引きこもりになるだろう。……休日の僕そのままだな。 「で、写真だっけ? そんなクソどーでもいいもん撮ってないしなんなら確認してもいい。そして済んだらはやく帰ってくれ」 「あ、このゲーム!」 「おい、勝手に人の部屋物色するな」 「いいじゃん」 「よくない」 「それよりゲームしよ」 「おい、勝手に触るな」 「これやろ、これ」  たぶん村越さんが取り出したのは、昔から大人気の格闘ゲームだった。何世代にもリメイクされ今では操作できるキャラクターが50体以上もいる。世界大会も行われていて競技として発足するか協議されるほどだ。
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