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「こういうのはどう? 私が負けたら大人しく帰るよ」
「嫌だね」
「自信ないんだ~」
「ゲームの持ち主だぞ。そんなわけはない」
「じゃあハンデあげるよ」
「いらんしやらん。早く帰れ」
「残機を半分にしてあげる。例えば4機だと私は2機から、3機だと……まぁいっか、1機で。どう?」
「やるぞ早く準備しろ」
それならば話は別だ。どれだけ自信があるのかは知らんが、僕だってやり込んだゲームだ。コテンパンのボッコボコのケチョンケチョンにしてやる。
「あ、そのかわり私が勝ったら質問するから答えてね」
「……まぁそのくらいなら」
「ちなみに回答しないとか嘘ついた場合はあのフィギュアへし折るから」
「なっ!?」
「そして勝負から降りた場合もへし折ります」
お年玉4年分の超レアフィギュアを人質に取られた。限定100体しかなく当時もやっとの思いで予約したものだ。ネットでは当時の4倍ほどの値段で売られている。それを折られるということは僕の背骨が折られると同じこと。負けられない。
「男の子って本当にああいうの好きだよね。戦隊とかヒーローとか」
「女の子だって持ち家があるだろ?」
「持ち家?」
「森の土地の家族」
「森の土地……あ、わかりづらいよ、それ」
遠慮なしに僕のゲーム機をセットしていく手が止まり、笑い始めた。そんなに面白いことを言った覚えはないのだが、どうやらツボにはまったらしい。はーっと数分間の笑いも落ち着き、絡まっていたコードを丁寧にほどいていた。コントローラーを渡され、僕たちは位置についた。
「そうだ、追加で罰ゲームとかあるともっと盛り上がると思わない?」
「思わない。これ以上の罰ゲームは勘弁してほしい」
「これ以上?」
お前とゲームすることだよ、とは言わなかった。相手を気遣う優しい少年だからね僕は。
「なんでもない。早く始めよう」
「お、やる気満々だね」
何しろ僕は1回勝つだけでいいのだ。リスクも質問次第だが、そこまで高くない。
画面を操作していき、キャラ選択になる。たぶん村越さんは迷わずあるキャラを選んだ。蘇生力が高いが、技の威力はそこまでない。操作性も難しくミスも起きやすい。これは勝ったと思った。僕は昔からいる剣士を選択。技の威力もあり、蘇生能力もそこそこ。何回かやれば勝てると思った。
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