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父は、森崎家が関わる公共事業で塵のように扱われ、死を待たずに埋められた。
父の死後母は体を売り、病を得て腐るように死んだ。
以来、多くのことは他人事で、死の間際の長過ぎる雑音だった。
汚水の氾濫はんらんする暗い貧民街で声をかけられたのは、そんな時だ。
『お前、綺麗な面ァしてるじゃねぇか』
思わず身構えたのを覚えている。
少年趣味の男にどうにかされそうになる、という場面はこれまでにも幾度かあったのだが──男は、僕の性的な部分には全く興味がないようだった。
事情を知った男は深く同情し、怒りを肯定し、衣食住の面倒を見てくれるようになった。
『お前は面が良いが、それ以上に頭がいい。裏の稼業はな、力より頭が大事なんだ』
『お前の両親を見殺しにした世間に、森崎に仇を打ってやれ』
僕は男を先生と呼んだ。
先生は自分を「政界と財界の御用聞き」と称し、表に出せない様々な仕事の仲介役をしていた。
転機はすぐに訪れた。
『顕久』の父親である桐羽俊行侯爵──彼は、喘息の薬として開発された、メタンフェタミンの奴隷になった男だ。
桐羽侯爵家は没落の真っ最中だった。
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