【短編】帝都初恋復讐譚~令嬢は侯爵の漆黒の瞳に囚われる

24/26
前へ
/26ページ
次へ
 身柄を返さずに上海の外国人租界に存在する、あらゆる快楽が味わえるという触れ込みの『娯楽施設』に売り渡す事。 『娯楽施設』の創立者と面識がある先生が、珠緒を取り戻すために交渉役を買って出るとし、森崎家に金銭を要求する事。  だが出来なかった。  計画のため、珠緒の心を奪おうとして──逆に、僕の心が囚とらわれたから。  それでも、先生は計画を実行するに違いなかった。  だから。 「先生……」 「お前、どういうつもりだ?女と逃げたと思ったら、騒ぎを起こして」 「あなたには、恩がある。あなたに拾われていなければ、俺は死んでいた」 「わかってるじゃねぇか。早く女を連れてこい。恩を返せよ」 「だが俺は、もう貴方には従えない」 「あ?何を言ってやがる……」  銃を向けると、先生は目を剥いた。  そして、想定通り── 「てめぇ、親代わりの俺を裏切るとは良い根性をしてるじゃねぇかッ!!」  銃をこちらに向け、躊躇ためらいなく発砲する。  ダンッ!!! 「──!!」  銃声が響いたが、僕は無傷だった。そして先生は、 「……ああ?何だこれ」  血塗みれの手を凝視していた。  絨毯に、ぽたぽたと血が落ちる。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加