【短編】帝都初恋復讐譚～令嬢は侯爵の漆黒の瞳に囚われる

　暮れなずむ空の色は、彼女の瞳に宿る炎を思い出させた。

『銀座の欧風料理店地下から出火　逃げ惑う人々』
　物騒な文言が、紙面を飾っている。
　あの日から珠緒は桐羽の屋敷で、祈るようにして過ごしていた。
　泣きはらした頬にふと冷たい空気が当たるのを感じて、顔を上げる。
「……っ！」
　そこには、愛しい人の姿があって。
涸かれ果てたと思っていた涙が、また溢れた。
　駆け寄りその胸に飛び込むと、きつく抱きしめられた。

　彼の秘密も過去も、全てを愛して行生きていく。
　私達はきっと、お互いが生きる理由だから。