【短編】帝都初恋復讐譚~令嬢は侯爵の漆黒の瞳に囚われる

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「ご一新からこの大正の世に至るまでの間に、この森崎家は数々の事業を立ち上げ成功し、帝国のために貢献してまいりました。情勢の不安定な時分は幾度もございましたが、その(ともしび)は消えることはなく、今でも燃え続けているのです」  この話を聞くのは、もう何度目だろうか? 「お家の灯を絶たやしてはなりません」 「それがどうして、世情に興味を持つなという話になるのかわからないわ」 「小賢しい女子を、殿方は嫌うからです。お花を愛でたり美しく着飾きかざったり。それでいいのです。なにがご不満なのか、多喜にはわかりかねます。同じようにしたいと心の底から願っても、叶かなわぬ者の方が多いのですから」  つまりは、  人形のように美しく着飾って。  嫁ぎ、大人しく相手に仕え、血筋の良い子を成し、その系譜を紡げということである。  殿方に嫌われれば子を成しえない可能性があるから、殿方が好まない行動は避さけるべきと多喜は言いたいのだ。 「時代遅れにも程ほどがあるわ」
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