プロローグ

3/3
前へ
/3ページ
次へ
ふと、目を向けるとある小説家の卵が頭を悩ませていた。 昔みたいに書けない。 あの時は本当にすらすらとかけたのに。 これはスランプだ…。 どうやって脱出すればいいんだ。 そんな声が私にも聞こえそうなほどに悩んでいた。 あんまりにも思い悩んでいたので私は彼がどんな創作活動をしていたのかが気になった。 そうしてみたらなんということか。 この青年。 なんとまあ適当な創作活動をしてるのだ。 この青年は思いつきにまかせ自分の人生経験を文章に書き殴っただけの作品を創作だと勘違いしておるではないか。 そんなものは創作ではない。 形を変えた日記なのだ。 ある程度、量を書けばネタなんぞ尽きるであろう。 卵とは孵化する可能性があるからこそ卵なのだ。 この男は卵のふりをしたみかんだ。 ただ温めていても熟成が進み、いずれ朽ちるのを待つだけの存在。 ただ腐るだけでなく周りに負のオーラを伝播させるだけの厄介な存在だ。 仕方ない。わたしが手を差し伸べてやろう。 この腐りかけのみかんをみかんにしてやろうではないか。 いいかみかんよ。 ネタが尽きてからが創作なのだ。 0の状態からいかに世界を作り出すか。 自分の知らないキャラクターをいかに動かすのかが創作なのだ。 もう一つアドバイスをやろう。 そうして生み出したネタをいくらでも研鑽せよ。 ネタをネタのまま書き上げたいなんてものはただの創作欲に取り憑かれた狂気の仕事なのだ。 そこに読んでもらう文章力、表現力、気心がないと作品は作品として成り立たない。 「創作は正気の沙汰では書けない。」 などという言葉に逃げるな。 あえて言おう。 「創作は狂気の沙汰では書けない。」 と。 創作欲は確かに必要だ。 しかしそんな狂気のドーピングやスパイスでは意欲も人気も続きはしない。 創作欲という狂気を胸に物語を研鑽する習慣を身につけよ。 さすればお前のような腐りかけのみかんも手に取ってもらえる日がくるであろうよ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加