2 実行

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 翌日、わたしはさっそくみゆき達を呼び出した。ソーシャルディスタンスを保つために、SNS越しに。集まれないのも歯がゆいけど、仕方ない。 「真由、本気だったんだね……」 「あったり前でしょ。わたしはいつだって本気よ」 「あの、ホントに雨降っちゃうよ。いいの……?」  詩織の言葉は文字すら内気そうで、本人の顔が見えるような気さえする。 「大丈夫! わたしのおばあちゃんは、詩織と逆でスーパー晴れ女なの。例え天気予報が雨でも、おばあちゃんが来たら絶対晴れるの。その血を引くわたしも晴れ女だから」 「対消滅しそうだな……」  尚弥、昨日から思ってたけど、あんた結構ツッコミ体質なのね。 「ま、それを信じるしかねーな。花火やるのはいいけど、どこでやるんだ?」  裕太、普段はなんにも考えてなさそうだけど、割と言うことは真っ当。 「そうね、おもちゃとは言え打ち上げ花火をやるんだったら、ある程度開けたところの方がいいよね」 「ディスタンスも必要だもんな。そんなとこあるか?」 「海浜公園はどうだろ? あそこなら広いし」  尚弥の提案に、みんなが賛成した。海浜公園は海沿いにある公園だけど、公園と言うより単なる埋め立て地だ。  そこから先は割とスムーズに進んだ。花火はめいめいが持ち込み、消火用のバケツも用意する。感染対策として、それぞれ2メートル程離れた位置にいる。何かあった時のために、誰か一人大人に付き添ってもらう。これはわたしの社会人やってるお兄ちゃんに頼むことにした。  決行日時は、裕太の強い希望により一週間後の夜7時45分。……てか、なんでこんな半端な時間? 「まーいいじゃんよ」  訊いてみても、その一言で終わった。  ともあれ! 花火大会、やってやるわよ! 「いーよ」  付き添いを頼んだら、お兄ちゃんはあっさり承諾してくれた。最近はテレワークで、時間の融通が利きやすいらしい。 「ただ、いくらおもちゃの打ち上げ花火でも、公園を使うなら許可がいると思うよ。役所で訊いてみたらどう?」 「なんか、めんどそう……」 「本気でやるんだったら、それくらいしないとな」  お兄ちゃんの言う通りだ。いっぺんやるって決めたなら、それくらいしないと。そっちもお兄ちゃんがついて行ってくれると言うので、お言葉に甘えることにする。 「頑張ってるねー、真由」  大学生のお姉ちゃんが混ぜっ返して来た。 「でもさー、どうしてそんなに花火したいの?」  それは……わたしにもわからない。でも、詩織の話を聞いてて、何が何でも花火をやりたくなったんだ。  わたしは戸棚の上に飾ってある写真に目を向けた。家族の写真と一緒に、去年亡くなったおばあちゃんの写真も飾ってある。あの時、何故かおばあちゃんのことが頭によぎったんだ。 「おばあちゃんって、すっごい晴れ女だったよね」 「だったねー」  お兄ちゃんとお姉ちゃんもうなずいた。 「学校行事も家族の予定も、おばあちゃんが来たら必ず晴れてたし」 「いとこのしーちゃんの結婚式の時なんて、すごかったよね」 「そうそう。前日まで大雨注意報出てたのに」 「当日おばあちゃんが来た途端に、まっさらに晴れちゃって」 「でも、おばあちゃんそういうの全然自慢したりしなかったよね」  そうだ。おばあちゃんは晴れになることを、自分が原因だって全く言わなかった。むしろ否定してた。  でも、おばあちゃん。今回だけは、どうか力を貸してください。  その日が近づくに連れ、わたしは何だか不安になって来た。天気は最近不安定で、日本のあちこちでゲリラ豪雨になってたりする。 「みゆき、占い得意だったよね? 当日晴れないか、占えない?」 「それはダメ」  SNSからは、無情な答えが返って来る。 「わたしの占いはね、悪い結果に限ってすごい的中率になっちゃうの。もし雨の結果が出たら、ホントに大雨になっちゃうよ。だから、占いは出来ないよ」  そうだった。みゆきの占いって、悪い結果ばかり百発百中レベルで当てる。だからもう占いをやめてるんだった……。  わたしはがっくりと肩を落とした。
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