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泰平の世が続く時代。
ここに一人、切に師匠を望むものがいた。
強くなりたい。
自立したい。
頼られる存在になりたい。
そう強く思い、同時にそれを叶えてくれる師匠を探しているのだ。
だが、現実にはそんな師匠はおらず、また、探してもいるものではなかった。
「なぜだ。どうして誰も解らないと言うのだ。こういう感じでと、ふんわりしか伝えられないのだ。儀礼として決まっているからとしか答えないんだ」
師匠を探す土御門泰久は、そう呟いて頭を抱える。
彼は京の都で陰陽師として働いている。それも陰陽寮で陰陽博士なんていう立派な地位にある。しかし、彼はその陰陽道が何たるかが解らずに悩んでいた。
「何でだ?」
十七歳と年若くして陰陽博士になれたのは、安倍晴明から連なる土御門家の人間だからだ。次期当主だからだ。だが、そんな理由だけでいていい地位じゃないだろうと、日々悩んでいる。
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