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「さて、これでちょこまかと動けないぞ。どうやら守らねばならない者のようだし、これでお前は戦いを放棄できない」
くくっと楽しそうに道満は笑う。
最初から、道満の狙いは泰久を動けなくすることだったらしい。晴明は舌打ちする。これでどちらも戦線離脱が叶わなくなってしまった。
つまり、邪魔になる泰久だけを先に逃がそうとすることを阻止するのが目的だったのだ。これで晴明はますます動きを制限されてしまう。
「陰陽寮に入り込む狐と烏。どちらも我らが大願を果たすのに邪魔だ。ここで消えてもらうぞ」
道満はそう宣言すると、晴明に向って大きく踏み込む。
晴明はもう一本短刀を取り出すと、それを道満に向けて投げた。しかし、一撃を避ける時間しか稼げない。道満はすぐに刀を構え直すと、今度は泰久目がけて斬りつけてきた。
「しまった」
続けて自分を攻撃すると思っていた晴明は、思わず泰久から離れていた。道満はこちらに背を向けているが、短刀では届かない。
「っつ」
ヤバいと思うも、ここで晴明がやられては大変だ。安倍家の未来が消えてしまう。自分のせいで晴明が死ぬようなことがあってはならないのだ。
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