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少女は自分のベッドの中に戻ると、自分が横たわるベッドに腰かけている悪魔の少年と目がかち合う。
少女は精気を多少吸われた心地よい疲労感に身を委ねながら、暫しなにも話さず、少年と見つめ合う。
嗚呼――そういえば、お礼を言わないとと思い立ったとき、少年のほうから口を開いた。
「暫く、会えなくなる」
「……え?」
「仕事は終わっていないが、都合上な」
「やだ」
「……やだ、って」
頬を膨らまる少女に、少年は困った顔になった。
だって、と、少女は言った。
「『友達』がいなくなるなんて、嫌」
少女が放った二文字に悪魔の少年は一瞬、意外そうに目を瞬かせる。
そこからすぐに少年は元の表情に戻ると、横たわった姿勢でシーツの上に置かれた少女の手の甲に、自分の手を重ねた。
「また会えるさ」
「……いつ?」
「できるだけ。この先も会いに行く」
「本当?」
「本当だ。友達だからな」
「これからも、ずっと?」
「勿論だ」
少年が頷くと、少女は少し安堵した顔で、同時に微睡み始める。
「本当、に。約束……ずっと友達だからね」
「ずっと、友達だ」
「じゃあ、寝るまで、こうしてて。傍にいて――」
「いいぞ」
そんな会話の最中――薄々、少女は気づいていた。目を覚まして朝になると、きっと少年は自分の前から姿を消しているのだろう、と。
それでも、彼女は微睡みながら、信じた。
悪魔の少年が、また友達として、自分が生きているうちに自分の前に現れる『いつか』を。
あと残り少ない命の中で。
一つでも多く自分に『目覚め』が来ることを祈りながら。
『おやすみ』
悪魔の少年の声を、眠りの直前、少女は確かに聞いた。
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