寝るだけの仕事

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「寝ているだけで稼げる仕事ないかな〜」  そんなときに口からついて出た言葉がこれである 。仮にも就職活動中なのであるから、そんな夢みたいなことを言っている暇があったらハローワークに行け、という話だ。 沙菜が苛立つのも無理はない。 「ねぇさっきの話聞いてた?」  テーブルに肘をつき、呆れた様子を隠そうともせずに沙菜が言った。 慌てて顔を上げる。 「あぁ、聞いてたよ。寝ているだけで稼げる仕事はこの世にはないって話」 「全然聞いてないじゃない。式場どうするって聞いたの。 結婚指輪も決めないといけないし」  沙菜が深いため息をつく。ため息をつきたいのは隆太だって同じだ。 「てきとうに決めておいてくれていいよ。沙菜が好きなので」  彼女の意見を尊重するいい彼氏のような爽やかな笑みを返すが、沙菜には全く響いていないようだ。 隆太との会話を諦めて式場のパンフレットに視線を落とした。
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