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「ここか」
沙菜がプリントアウトしてくれた地図によると、このビルの中のはずだ。
今どきの、オフィスがいくつも入ったような建物の12階。
地図を折りたたんでかばんにしまい、エレベーターで目的のフロアまで向かう。
『12』が点滅し金属製の扉が開くと、『睡眠研究所』という看板が見えた。
恐る恐る近づき、首だけ突き出して中の様子を窺う。
壁も、開放的に開け放たれた扉も、仕切りとして使われているカーテンも全てが白かった。
扉のすぐ右側に受付があり、そこに立っているスタッフまでもが白い服を着ていた。
だらしなく口を開けて覗き見している自分が急に恥ずかしくなり、咳払いをして受付に近づく。
「あの、アルバイトで来たんですけど」
「お待ちしておりました。柏木様ですね」
受付の女性は丁寧に頭を下げ、隆太を奥の部屋へと案内した。
「それでは、こちらで少々お待ちください」
通された部屋は、入り口と同じように何もかもが真っ白だった。
部屋というよりは分厚いカーテンで仕切られただけの空間といってもよかったかもしれない。
自分と受付女性以外に誰もいないのか、カーテンに防音効果があるのか、不思議と周りの音がほとんど聞こえなかった。
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