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このカプセルは一般的に“コクーン”とか“ゆりかご“とか通称されている。それは世に現れた当初には非常に懐疑的に見られ、多くの人が拒否感をおぼえた。けれども、ここ数十年で非常な広がりを見せて、今ではこのカプセルについて倫理的な議論が交わされることは無くなった。それどころか、社会全体がこの機械の存在を前提にして動いていると言っても過言ではない。 それは夢を見せることのできる機械だった。しかし、ただの夢ではない。使用者の脳に特殊な電気信号を送って、夢の中で非常な幸福を味合わせることができる。夢の中では、使用者もそれが夢だと知ることはない。だから、カプセルの中に入ったことも忘れてしまう。その夢はそのリアリティにおいて、全く現実と異なるところがない。ただ、違うところといえば、現実にあるような悪いことは何も起こらず、ただ幸福だけを感じ続けることだ。
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