コクーン

2

使用者が実際どんな夢を見るのか、についてはよくわからない。夢の内容は使用者によるのだ。この機械は使用者の脳に干渉して、彼らが意識的に想像する以上の幸福体験を無意識のうちから探し出してきて、それを夢として流し続ける。人々は、それがどんなに素晴らしい体験か夢想した。そして、散々妄想を巡らせたあと、実際に見る夢はそれよりもずっと素晴らしいものだと言う事実に恐れすら感じるのだった。

けれども、ではどうして一緒に安楽死装置なんてものがくっついているのか、と言う点については簡単な理屈がある。それは、夢を見終わった者にとって現実の世界がたとえ一秒であっても耐えがたいものだからだ。だから、このカプセルには必ず安楽死装置が付けられることになっている。