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マリは経理の仕事に就いていて、夜には別な仕事もしていた。殆どまともな食事も睡眠も取らないままに、ただ働き続けた。充分な給料をもらっているとは言えなかったから、それを補えるだけ長く働くしかなかった。必死に働いてユウコが大人になる前に二人分の機械を買うことができたら、娘がこの社会のあらゆる悪意に晒される前に一緒に全て終わりにするはずだった。 マリはベッドの上に腰掛けると大きく息を吸い込んだ。心臓がバクバクと鳴って、全身に耐え難い倦怠感があった。彼女は少し前に医師に余命わずかだと宣告されたとき、まず何よりも先に娘のためにカプセルを買うことを考えた。あと少しだけ金を貯めれば、安いものなら買えるはずだった。治療のために金を使うことは考えなかった。どうせ何をしたって、もう手遅れに違いなかった。少しでも金を無駄にすれば、機械は買えない。一応、保険金の請求を行ったが、役所からは何やら専門用語に塗れた通知書だけが送られてきた。とにかく、保険の対象外だから金は払われないということだけは理解できた。 それから、前よりもいっそう働くようになった。
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