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気怠くスマホをいじってメッセージアプリを立ち上げてくるくるスクロールさせていくと途中、ひとつの名前に目が止まる。
あー奈津……元気かな
最近会ってないな
最後のメッセージは3ヶ月前だった。
なんとなく気が向いて飲みに行った時。
奈津は学生時代からの女友達だ。大学で仲良かったグループの一員で。よくみんなで集まって飲んだり、海に行ったりドライブに行ったりしていた。
奈津はそんな仲間内のひとりで、小柄で元気な、妹みたいな女の子で。
奈津と付き合ったことは一度もない。
酔い潰れたのを担いだことはあるし、寝落ちた奈津を部屋に泊めたこともあるけれど、それ以上手を出したことも、キスさえ、一度もない。
俺たちは昔も今も、友達だ。
告白は2度された。
それだけだ。
奈津は俺の、ものすごく大切な友達だ。
奈津とのメッセージの画面を指でつついて遡る。
みんなで、時にはふたりで飲んだ記録みたいのが連なっている。
あー、奈津、どうしてるかな
時々妙に会いたくなる。俺たちは友達だけど。友達だから。
カフェの店員が近づいてきて、正面に置き去られたコーヒーカップを下げていくのを、頬杖をついて見守って。
しばらく、テーブルを右手の人差し指で叩きながら考えていた。それからひとつ、ため息をついて。
『暇なんだけど、飲みに行かね?』
短いメッセージが、吹き出しの形で投げ出される。
すぐに既読がつくわけじゃないのが、少しだけ手持ち無沙汰だ。
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