嫉妬深いのは

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嫉妬深いのは

「ねぇ離婚したしさ、付き合ってもいいよ」 相変わらず上からの俺に、 めぐは何も違和感を感じないようだ。 バカかわいい。 目をキラキラさせて“付き合いたいですオーラ”を出している。 でもまだまだとまどっているようで、 はっきりとした返事はなかなかもらえなかった。 こいつわざとかなって思うこともあった。 もうスナックで働いてたこと知ってるし、 年上で結婚経験もあるから、 なんか計算してるんじゃないかって、 勘ぐってしまう自分が悲しい。 しかも、いつか楽しげに話をしていた、 娘の先生ともまだ連絡とってるみたいで、 マジでイライラする。 まぁ娘が先生を慕ってたからなんだろうけど…。 だいたい恵実は愛想よすぎる。 この前行ったドラックストアの店員にも、 目をしっかり見てにっこりしてたし。 わかってる。 わかってるよ。 丁寧なだけなんだって。 でも、もしそいつに気に入られたらどうすんの? 会社の先輩にそのことを愚痴ったら。 「いやフウトにどう見えてるのか知らんけど、 恵実さん普通におばさんだし、 お前といるとおかんみたいだよ? 正直浮気なんてないない」 と言われた。 さらに、 「むしろフウトって無表情だし、 この話聞かなかったらそんな嫉妬してるように見えない。 逆に、フウトは恵実さんに冷たいように感じる」 と付け足された。 いやそんなことないから、 と心の中でつぶやく。  「まぁでもフウト。 緊張したりすると無表情爆裂だからなぁ」 「そうそう、 仕事の時のってビジネススマイルなの? っていうぐらい、 好きな人の前とかだとがちがちだよなぁ(笑)」 はい…その通りです。 先輩たちの言葉に返す言葉もない。 でも、姑息な俺は、ひそかに思う。 俺の性格が功を奏して、 恵実が"自分のほうがフウト君に惚れてる" と思ってくれたら最高だ、と。 「お疲れさまです」 事務員の可南子はいわゆる“陽キャリア充”だ。 顔も体も文句無しいい女だ。  「お疲れ」 「今日みんなで飲み行くんですけど、 中嶋さんも行きませんか?」 二ッコニコで誘われて断れる男はいないだろう。 「ちょっと待ってて」 でも今はそんな可南子の笑顔より、 恵実が一番! 一応恵実に確認とる。 #めぐ、今日会社の人と飲み行っていい? 返事はわかってる。 ※お疲れさま。いいよ  やっぱり。 理解ある彼女は最高だけど、 俺としては少しやきもち焼いたり、 止めたりしてくれてもいいのに、とかちょっぴり思う。 ※帰りお迎え行こうか? 少しへこんだ俺に、恵実からのうれしい提案。 #何時になるかわかんないけどいい? うれしいクセにツンしてしまう俺。 ※楓人君が迷惑じゃなければ ※私は何時でも大丈夫 「なににやけんるんですか?」 スマホに夢中な俺に、 待たされた可南子のこの一言で現実にもどる。 「飲み会いけます?」 可南子は怪訝そうに再度尋ねてくる。 「うん 大丈夫」 「やった!」 俺の返事に可南子は小さくジャンプして、 「仕事終わったら、いつもの飲み屋で」 と言って仕事に戻っていった。 #じゃ 解散したら連絡する ※はい 俺は恵実に追加の返信をした。 飲み会よりお迎えが楽しみになってしまう。
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