嫉妬深いのは

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仕事終わって飲むビールはうまい。 今日は可南子が隣にいるせいか、 俺の周りも自然と人が集まってくる。 みんな可南子と一緒に飲みたいんだろうなぁ、 という熱気が伝わってくる。 可南子は気づかいでかわいくて性格もいい。  素直だしみんなに好かれるのは当然の結果だ。 正直恵実がこんなじゃなくって良かったと思う。 恵実にこんなにも男が群がってたら、 俺はどうなるかわからない。 先輩だろうが既婚者だろうが、 何ならパートのおばちゃんとべたべたされるのもヤダ。 「顔険しいですよ」 可南子が俺の眉間に人差し指を当てる。 ちょっと酔ってるのか、 可南子は赤く染まった顔を近づけてくる。 「マジか?怖い顔してた?」 少し距離を置いた俺に、 うんうんとうなづきながら少し距離を詰める可南子。 「何々?可南子、フウトにいじめられてるの?」 よしよしと先輩が俺たちの会話に入ってくる。 ちょっとほっとする俺。 なのに、可南子は、 「中嶋さんがめっちゃ厳しい顔してたんです」 と言って俺のほっぺをつまんでくる。 「やめろや」 いやマジで痛いし。 恵実はこういうことしない。 そんなことを考えてしまう。 そして、ふと思う。 恵実も酔っぱらったらするのかなぁ? やばい、想像しただけで複雑な気持ちがせりあがってくる。 「中嶋さんってこんな顔しててもイケメンですよね」 再度俺のほっぺを引っ張って、 可南子は上機嫌だ。 「いや、そんなことないから」 ちょっと拒否しながら俺は反論する。 「否定されるのも腹立つなぁ」 先輩にも絡まれる。 なんなんだよ。 「こりゃ、彼女は嫉妬しちゃうだろうなぁ」 先輩が言った一言で可南子の表情がすっと冷めた。 「中嶋さん彼女いるんですか?」 キョトンとした顔をして俺を見た。 まぁそんな話会社でしないしな。 知らない人のほうが多い。 「いるよ。もうなんかあるとすぐ『めぐめぐ』だもんな」 何も言わない俺の代わりに、 先輩が答える。 「いやそんな言ってないから」 と先輩に突っ込みながらも、 可南子の様子が気になった。 いつも笑顔なのに、 こんなに固まってる可南子はじめて見た。 え?俺に彼女いたことそんなびっくりすること? 「何それ?どこの人?いつから付き合ってるんですか?」 我に返ったのか、 急に距離を詰めてきて質問攻めにされた。 「い いや 付き合い始めたのは最近だけど…」 なんか圧に押されてしまう。 「…そっか」 そこから可南子のテンションは明らかに下がった。 そのしぐさに、周りにいた何人かは悟ってしまう。 そして俺も—。  もしかして、可南子は俺のこと…。 とちょっと勘ぐってしまった。 そんな俺たちにかまうことなく、 飲み会は盛り上がり、 解散間近の時間となった。  俺は少し気になって可南子のほうを見ると、 可南子も俺のほうを見ていた。 そして少し近づいてきて、 「私、知らなくて、ごめんなさい」 と言っってきた。 それは何に対してのごめんなさいなのかはわからなかったけど、 力なく笑った可南子に俺も、 「ごめん」 と言ってしまった。 多分先輩たちは、 可南子を振るなんて惜しいことしたな、とか、 可南子が相手なら、二股でもいいんじゃん、 とか思うかもしれない。 でもやっぱり俺は可南子じゃダメで、 恵実を求めてしまう。 可南子には申し訳ないけど、 もうすぐ迎えに来る恵実のことを考えて、 にやけてしまいそうになる。
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