していいの?

4/4

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「恵実」 呼びかけてこっちを向かせる。 なに?という顔をする。 親指で恵実の唇をなぞってみる。 それだけで、恵実がどんどん色気を増すような気がする。 そのまま自分の唇を近づける。 少し戸惑ったような顔をするけど、 俺はもう止められない。 「…ふう と」 俺の名前を紡いだ唇の間近で、 「キス していい?」 と聞いてみる。 まぁダメと言われてもするけど。 「…ん」恵実はゆっくり目を閉じる。 そんな顔できるんじゃん。 そう思いながらゆっくり唇を重ねる。 一度離れて恵実の顔を見たことを後悔する。 やばい、色気たっぷりなんだけど。 もう無理じゃん、俺。 俺は少し乱暴にもう一度唇を重ねる。 でも今度は半ば強引に唇に舌を割り入れる。 少しびくっとしたけど抵抗はしない。 ねぇ恵実、いいんだよね? 恵実の手は力なく俺の肩を押している。 早急すぎた進展に抵抗してるようだけど、 まったく力が入っていない。 「…う…ん…」 恵実の唇からもれる声が俺をどんどん欲情させる。 抑えきれない感情に任せて、 シャツの上から恵実の体に触る。 「あ…いゃ…ダメ…」 服の上なのに? だからもう無理だよ。 恵実を黙らせるためだけに口づけを深くする。 酸素を求めて浮上してくる恵実を容赦なく潜らせる。 涙を流した恵実に、 俺はどんどん黒く深くなっていく、 欲情という愛情に飲み込まれていく。 ダメだってわかってる。 こんな強引な感じじゃ。 恵実が大事だって。 でもどうしても今じゃなきゃダメな気がして、 カラダを手に入れたら満足かって言われたら多分違うけど、 この行為を許してくれたら、 それは恵実の心も俺の手に堕ちるってことだと。 なんだかそんな気がして…。 「はぁ…っ」 息をついて目を開ける恵実が、 さらに瞳を大きくして俺を見る。 そして俺のほほに触れた。 そして— ぎゅっと抱きしめてくれる。 恵実が小さく、 「ごめんやっぱり」 そういって俺にキスした後、 「明かりは消して…」 と言ってほほ笑んだ。 そして深く深いキスをしてくれる。 「ダメ?」 あぁ、もっと大人の余裕で、 もっと恵実が夢中になるような雰囲気で、 抱こうと思ってたのに…。 「"シテ"いいの?」 子供みたいなねだり方しかできない自分に、 笑えてくる。 「私でよければ」 やっぱり恵実に包み込まれてしまう。 もう雰囲気とかシュチュエーションとか全部吹っ飛ぶ。 恵実とつながりたい。 恵実を全部俺のものにしたい。 ただそれだけが俺を支配する。 溺れてるのはその気持ちにか? それとも恵実にか? その夜は初めての恵実の全部に、 どこまでもどん欲に俺の気持ちを注ぎ込んで求め続けた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加