大丈夫

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恵実はあんまり俺と出かけない。 「だって、釣り合ってない気がして」 というのが理由だ。 めぐの中では俺は超イケメン、自分みたいなおばさんにはもったいない、 と思っているようだ。 めぐには悪いけど非常にきもちいい。 ほんとはめぐの数倍俺のほうが嫉妬深い。 恵実の横にはもっと大人の男がいたほうがいいんじゃないかって、 俺だって感じてる。 とにかく、"俺に恥をかかせたくない" の一点張りで、 なかなかデートできないは痛い。 ある日、嫌がる恵実をどうにか連れ出して、 買い物ついでにランチに出掛けることに成功した。 「俺の副会に行くから、めぐの意見も聞きたい」 「いや、私センスないし、 一緒に見るだけならいいよ」 「めぐが着てほしい服を選んでよ。 自分だと同じ雰囲気のばっかりになっちゃうから」 そんなことを話しながら歩いてると、 「中嶋さん」 後ろから声かけられる。 振り向くと、 「可南子」 そこに可南子がいた。 しかも男連れ。 彼氏か? 俺の邪推を見すか明日ように、 「弟です」 可南子が言った。 「こ、こんにちは」 恵実は少しキョドリながらあいさつした。 “挨拶大事”っていつも言ってるもんね。 たとえどんな場面でも、ちゃんと挨拶する恵実に、 クスっとなってしまいそうになる。 「あ」 そんな可南子のちょのちょっとした言葉で、 めぐが固くなるのがわかった。 「この前はごめんなさい!」 めぐの警戒に反して、 可南子は勢いよく頭を下げた。 俺らはびっくりしてあっけにとられたけど 、 弟君は 「ねーちゃん何やらかしたんだよ」 と言った。 「ちょっと…いやかなり失礼なこと言っちゃって…」 可南子がすまなそうに微笑む。 「あ あのほんとのことだし、気にしてません!」 めぐは慌てたようにそう言った。 そんなめぐをまっすぐとみて、 「でも、まだぜんぜんあきらめてないんで」 とにやりとする。 ひやひやする俺。 でもめぐもにっこり笑って、 「奪われないように精進します」 と言い放った。 「精進て」 と言って可南子は大爆笑だ。 恵実を見ると顔を真っ赤にしてうろたえている。 さっきまでの勢いはどうしたよ? どっちが年上かわからん。 「中嶋さん。可愛い彼女ですね」 それだけ言うと可南子は頭を下げて、 「それじゃ」と弟を連れて去っていった。 「やっぱりかわいいね。あの子」 めぐは興奮気味に可南子を見送ってる。 それはなんというか憧れのまなざしだった。 そんな顔されたら、 可南子にも嫉妬しそうだ。 少し咳払いをして、恵実の頭をポンポンした。 「あ、この色いいね」 照れ隠しなのか、 すぐそばの店頭にあるシャツを見てそんなことを言う。 「にあうかな?」 俺も照れ隠しにそのシャツを見る。 「似合うよきっと」 絶対に俺の年齢には似つかわしくない、 ダンディな雰囲気のシャツを二人で眺める。 可南子の登場で、 少しだけ心かき乱されてしまった。 でも、可南子はもう大丈夫そうだなって、 こっそり思った。
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