先に好きになったのはお前だけど

どっちが好きなの？

今日は仕事帰りにそのままめぐの家に行く。
「ただいま」
「お帰り」
当たり前のようにそんな会話を交わす。
「子供たちは？」
家の中が静かだし、
2人ともまだ帰ってないみたいだ。
「2人とも今日は金曜日だから、
遅いかもって連絡来た」
あぁ、お年頃だね。
友だちとか彼氏彼女とか、
だんだん親より優先されていくよね。
子供たちとも仲良くなった俺にとっても、
何となくさみしさを感じる。
「じゃ風呂入っていい？」
「いいよ」　
と言いながら始めて俺の方を振り返る恵実。
そして俺の姿をじっと見る。
作業着のままの俺をじっと見た後、
少し目をキラキラさせた気がした。
そういえばしばらく作業着姿見せてなかったな。
制服フェチの恵実にはたまらないのかもだけど、
俺としては早く脱ぎたい。
風呂に向かうと、
無意識なのか俺についてくる恵実。
「何？風呂入るんだけど」
ジャケットだけ脱ごうとすると、
とてつもなく切なそうな顔をする。
上目づかいで俺を見てくる。
わかってるよ。
わかってるぎゅってしてほしいんだよね。
何ならこのままでいてほしいんだろうけど、
それは無理。
言えばいいのに『ユニフォームのままぎゅってして』って。
恥ず菓子がってる意味が分からん。
でも結局俺のほうが我慢できなくなって、
両手を広げてしまう。
はいしっぽ振ったぁ
「おいで」
というと嬉しそうに抱き着いてくる。
俺を満喫したであろうめぐを見ると、
まだ何か言いたげだ。
「ん？」
と念のため聞いてみる。
するとどうにもこうにも恥ずかしそうに、
「あ、あのチューも」
とか言い出した。
へ？
「チューもいいですか？」
呆然とした俺を見て、
やばいことを言ってしまったと思ったのか、
「ごめんなさい！お風呂ごゆっくり」
と言って恵実は脱衣場を離れようと俺に背中を向けた。
けどそんなこと今更させない。
俺は恵実をぐっと引き寄せて
「もいっかい言って」
と耳元でささやく。
「え？」
「もう一回。ちゃんと目を見てお願いしてくれたら、
恵実のしたいことさせてあげる」
多分普通の人なら
『そんな上から言うならしなくていい』
とか言って怒るとこだよ？
でも恵実は俺のこと大好きだから、
かなり年上なのに従順に俺の要求をのみこむ。
「せっかくユニフォームなので、
そのままキスしたいです！」
？なんかひっかっかる言い方だけど、
俺も我慢できないし。
「いいよ」
と言ってキスをしてやる。
唇を離すとそれはそれは満足そうな恵実が、
俺の作業着姿を嬉しそうに視線で網羅した後。
「お風呂いいよ」
と言ってキッチンに消えていった。
これ俺喜んでいいのかな？
めぐから要求されるのはうれしいけど、
俺が好きなの？作業着(せいふく)が好きなの？