21人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
その機会は意外と早く訪れてしまった。
ある日配達で恵実の家のそばを通ったとき、
恵実がお店の外で、
若そうな男と楽しそうに話しているのが見えた。
旦那か?
そう思ったけど旦那って感じじゃなかった。
なんか胸騒ぎがして昼にLINEをしてみる。
#お疲れ様
#さっきお店の外にいた?
リプが遅い
※お疲れ様です
※お昼前ですか?
そうだよ!なんかイライラする
#うん 男の人と話してた
#旦那さん?
※あぁ はい
※旦那じゃないです
じゃ業者?
いやそんな感じでもないし、近所の人かな?
それにしてもやたら楽しそうだったし…。
一瞬でいろいろ考える。
※子供の学校にいた先生です
え?
※転勤したんですけど
※久しぶりにこっちに来たみたいで
※たまたま 会ったんで話し込んじゃって
#そうなんだ
予想外の答えに動揺したけど、
なるべくスマートに素っ気なく答えた。
でもあんな笑顔見せる相手って…。
何とも言えないもやもやした気持ちが沸き上がる。
え? もしかして俺やきもちやいてるの?
※親子共々お世話になった先生なんです
何その言い方。
"親子ともども"って
恵実は何のお世話になったの?
そんなの答えはわかりきってる。
たぶん学校のことや子供のことでお世話になったんだろうな。
でも 、あの笑顔は俺にはむけないよね?
相当気を許してるよな?
そう思ったら、俺ももっと距離を縮めたくなる
もっといろんな恵実を知りたい。
#そう言えば この前言ってたスナック
#いつにする?
焦った勢いで誘ってしまう。
でも…でも俺だって恵実を独占したい。
何故かその気持ちでいっぱいになる。
そして俺は知っている—。
きっと恵実はおれの誘いを断らない。
だって俺のこと好きだから。
※いいんですか?
※社交辞令だと思ってました
ほらむちゃくちゃ嬉しそうじゃん。
旦那に見せてやりたい。
さっきの男にも…。
#なんでよ、社交辞令なわけないじゃん
#俺 火曜日の夜なら大丈夫そう
恵実相手だと、急な誘いも躊躇なく出来る。
それほど自分に自信があった。
自身があるくせに焦ってしまう。
矛盾する俺の気持ち。
少し時間を開けて
※火曜日大丈夫です
とリプがくる。
ほらね。
そう思いつつ内心ほっとしている。
※場所と時間言ってくれたらお迎えに行きます
#え?いいの?
※はい 私は飲まないので
※運転大丈夫です!
#じゃお願いしようかな
かなり前のめりな感じが伝わって来て安心する。
旦那はともかく、
さっきの男より俺の方が恵実の中では優先順位が高い。
こんなマウントとるなんて、
俺の中の恵実への気持ちは、
軽い気持ちじゃなくなってるなぁと
少し自嘲する。
最初のコメントを投稿しよう!