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「‥叔父さん‥」
「五色って呼んで。京」
久しぶりの叔父さんの寝室。大きなベッドにかけてあった埃除けの真っ白な布を剥がしてそこに俺を横たえると、うっとりとした目で俺を見つめてゆっくりと大きくしなやかな手で身体中を撫でる。
「本当に兄さんにそっくりだよ。かわいい‥。あと何年かしたら美しくなるよ。京は」
「叔父さん‥やだよ‥」
「五色」
「‥‥」
「‥名前を呼んで?京」
「‥俺は父さんのかわりじゃない」
この変態男。
「そうだね。私は京も愛してる。──兄さんによく似た、ね」
凱と嶺が15、京が9歳の時三人の両親は事故でこの世を去った。
三人を引き取ったのは三人の父親の三羽の弟の五色だった。この時35歳。
三羽は母親の面影が漂う線の細い麗人だった。五色は父親に似て体格の良い男らしい美丈夫だ。五色と凱と嶺。この三人は同じ血を強く受け継いでる。
五色が兄の三羽への歪んだ愛に気づいたのはいつ頃だっただろうか。もうずいぶん長いこと思い続けている。
二人の家はそれなりの資産家で厳粛な家庭だった。父と母は政略結婚のようなもので歳もずいぶん離れていた。
父は家庭を顧みない仕事人で、母は美しかったが、五色が中学生になるときに別の男と夜逃げ同然で出て行った。それでもずいぶん長いこと家に留まったのだろう。なぜなら物心つく頃から母親からの愛情は二人になかったからだ。
ただ、そのなかで四つ上の兄は五色にいつも優しく、幼い時から五色は三羽の愛を独り占めしたいと考えるようになった。
兄の三羽は五色の最初に知った愛であり、五色の全てである。
───何度聞いたことか。知るかよ。ばかやろう。
確かに五色叔父さんには感謝している。父さんと母さんのじいちゃんもばあちゃんもすでに死んじゃってて、五色叔父さん以外近い親類はおらず、俺たち三人の引き取り手は五色叔父さんしか居なかった。
35歳とちょうど働き盛りに急に三人の子供が出来たのだ。けど、何一つ困ることなく、さらに十二分に贅沢な暮らしをさせてくれた。
13歳の頃までは優しくってかっこいい、大好きな自慢の叔父さんだった。
でも13の春。凱にいちゃんと嶺にいちゃんが春休みに旅行で家を空けた日。
あの時から家族ってのが俺の中で壊れた。
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