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「ただいまー。凱にーいちゃんおなかすいたー」
広いリビング。誰もいないし。
「あー、二人ともジムかあ」
中学時代から凱にいちゃんはサッカー、テニス、嶺にいちゃんはバスケと部活動をして、中学でも高校でももっと真剣に取り組まないかと誘われたみたいだけど、二人にとってスポーツは遊びなんだって。大学入ってからは、二人とも訳あって一年半前から週に三回、本格的なジムで総合格闘技を習いに行っている。毎日筋トレもしてて、前から体格はよかったけどさらにウエイトを増やしてムキムキになった。
「おなかへったぁ‥」
ぽそりと呟いて、しょうがないからキッチンを漁る。あっ、メロンパンを見つけた!
凱にいちゃんが用意したんだろう。俺が大好きだから。
メロンパンの袋を開けながらゆったりとしたソファに飛び乗って寝転がってパンをかじりながらスマホでゲーム。
二口目を齧りつこうとしたとき玄関のドアが開き、スリッパの静かな音が聞こえリビングの入り口に人影が見えた。俺は顔を上げた。
「おかえ───」
うそだろ。
そこには長身の男がいた。にいちゃんたちほどではないが、程よい筋肉が服の上からでもわかる体格のよさ。歳は41歳。黒い髪をスタイリッシュに後ろに流して、歳よりも若干若く見える。涼しげな目元にメタルフレームのメガネを掛けている。めっちゃ色気がある。見た目だけは最上級なんだよな。
「ご、五色叔父さん‥」
「ただいま。京」
五色叔父さんは柔らかい微笑みを向けると隣に座った。
「な、なんで‥。オ、オーストラリアは‥?」
「やっと仕事が片付いたよ。これからはずっと一緒に住めるね。京」
一緒に住むって何?怖いこと言い出すなよ。
「れ、連絡くれれば‥」
「ふふ。京を驚かせたくて」
「あ、あは。お、おどろいた‥」
五色叔父さんは俺の持っていたメロンパンに気付くと手から静かに奪い取り、美しい微笑みを浮かべた。
「京、あーん」
叔父さんは一口メロンパンを齧り二、三度咀嚼したままキスをしてこようとする。あーあ。はじまった。歯を食いしばりそれ以上の侵入を拒んだけど俺の顎を強く下げ、無理矢理口を開かせた。いてえよ。
「ん‥ぐ‥」
五色叔父さんの舌と咀嚼されたメロンパンが口の中を満たしてゆく。
俺の目には涙が浮かぶ。
「美味しい?」
俺は答えない。
「もう一口あげようか?」
俺は叔父さんから離れたかったけど、五色叔父さんの空いている片手は俺の細っせえ腕をしっかり掴んでる。
「京」
語尾上げて答えなさいって風に言う。この口調。ほんとトラウマ。逆らえない。
「‥いらない」
五色叔父さんは微笑むとパンをかじり咀嚼して今度は普通に食べた。
「美味しいけど京と一緒に食べる方がもっと美味しい」
うるせー。ばーか。
「‥帰ってくるなら連絡してよ」
「連絡したらあの二人に京を匿われちゃうかもしれないからね。‥まだ私のこと許してはくれないのかな?」
「あたりまえじゃん‥」
誰のせいでこんな生活になったと思ってんだよ。
「凱と嶺はお出かけ?」
「ジム」
「ああ。京を私から守るためにあの二人は格闘技を習い始めたんだったかな?」
パンのカスが付いていたのか、五色叔父さんは俺の口元を親指で拭った。そのまま親指を俺の口に突っ込んでくる。
さんざん口の中をいじくりまわした後、俺の涎でべとべとになった指を抜くと咥えて舐めた。やらしい顔。そこらへんの女なら濡れてんね。俺はこれからのこと想像して泣いちゃいそうだけど。
「まあ、いないんじゃ意味がないね」
かすかに笑うとテーブルの上にパンを置き、軽々と俺を抱き上げ寝室まで連れて行った。
「久しぶりだね?三ヶ月ぶりかな。この間帰国した時は三人で旅行に出かけてしまったから、たった一日しか会えなくて寂しかったよ。───かわいい私の京‥」
そう。三ヶ月前は帰ってくるって連絡があったからにいちゃんたちがその間九州に遊びに連れてってくれた。
でも五色叔父さんも予定より帰国を伸ばしたみたいで一日会うことになっちゃったけど。
五色叔父さんは優雅な手付きで俺の制服のボタンにてをかけると丁寧に外していった。
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