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ザーー。
雨がふってきた。
8才の娘は学校から帰ってきて空を見上げる。
「今日はやむかな」
「たぶん夕立だからやむと思うよ」
ピカーーゴロゴロ。雷が怒っている。
「キャーー」と娘は言わない。
平気な顔をして部屋で段ボールを切って何か作っている。
うちは父子家庭。離婚したばかり。ママはいない。
一度も「ママは?」と俺に聞いてこない。
俺は仕事から帰ってきて晩御飯の用意。
今日はカレーライスだ。
カレーと言っても、一昨日が水炊き。
昨日が余った鍋に素と肉と野菜を加えてちゃんこ鍋
今日が余った鍋にカレーのルーを加えて、カレーライス。
このカレーライスがいろいろな味がしみこんで激ウマなのだ。
料理ができたので娘を呼びに行くと、段ボールで作ったゲームボーイをやっている。
すごく熱心に親指を動かしながら、絵にかいたボタンを操作している。
「うっ、やられた」とか言いながら。
何も動かない段ボールの画面を一生懸命に見て指が激しく動いてる。
俺は泣けてくる。
ゲームボーイくらい買ってあげるのに。
なぜ「買って」と娘は言わないのだろう。
「ご飯だよー」
「はーい」
娘がとんできてお兄ちゃんと一緒に3人で夕ご飯を食べる。
「美味しいね。パパは料理の天才ね」
ただの手抜き料理なのだが・・・申し訳ない。
雨がやんだようだ。
窓から光りがさしてくる。
「みんなで外に出てみようか」
外に出ると大きな虹が、アパートのうしろに大きく架かっていた。
「うわーー虹だ」
子供たちが大声で叫び大喜びでクルクルと踊る。
俺は心の中で思う。
いつかみんな幸せになれと・・・
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