大好きなひと

2/5
前へ
/298ページ
次へ
4月。 高校2年生になった私、滝川加恋(たきがわ かれん)は、目の前にいる同じクラスの男の子、大橋直人くんに呼び出され、昼休みの今、ほとんど人通りのない廊下にいた。 「うん、知ってた」 “けど、きちんと気持ち、伝えたかったから” 私の目をじっと見て伝えてくれた後、大橋くんは少し寂しそうに笑った。 「そっか」 ごめんね、も、ありがとう、も違うような気がして、簡単な言葉を返すと、大橋くんは呼び出しに応えてくれたお礼だけを告げて、私に背を向けた。 そう、私には、彼氏がいる。 名前は、坂口 涼(さかぐち りょう)。 同じ中学校出身で、同じ高校に通う1歳上の彼は、正直とてもかっこいい。 切れ長の目に、筋の通った高い鼻、少し薄い唇。それに加え、身長184cmというスタイルの良さ。 彼は街中でスカウトされたことをきっかけに、自分の美貌を活かして半年前からモデルとして活動を始めた。 「加恋」 そしてテレビでの活躍が目立ち始めた最近は、この甘い声が、世間の女の子を虜にしていた。
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加