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暗い過去
その晩、俺は夢を見た。
――友達だと思っていた男が、俺の家に火を放った。
「なんでだ? 俺がお前に何をした!?」
焼け落ちる桑の木を前にして問い詰め寄ると、男は歪んだ顔でこう言った。
「近寄るな、妖怪! 気味が悪い!」
燃え盛る焔にあてられ、頭にカッと血が登る。
俺は男に飛びかかり、両の目をくり抜いた。
「やめてぇ!」
男の妻と思しき人間が駆け寄ってくる中、俺は男にとどめを刺した。
草むらに立っている5歳くらいの少女が怯えきった目でこちらを見ている――
少女と目があったところで俺は目を覚ました。
ハァハァと肩で荒い呼吸を繰り返す。
かつて、友だった男に裏切られ家を焼かれた。男を惨殺した俺はひたすら北上し、ようやく見つけたこのガジュマルの大樹に住み着いた。
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