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まるで太陽のよう
翌日から娘は毎日やってきた。
俺が木の洞に潜んでいると、トテトテと駆けてきて、一番大きな根に腰を下ろす。
たいてい握り飯を一つ持ってきてそれを半分置いていく。
日の暮れる前まで一人で喋って、またトテトテと里に戻っていく。
3日目に、耐えきれなくなった俺はとうとう娘に話しかけた。
「お前、名はなんと言う?」
娘は嬉しそうに「思加那」と名乗った。
「そんなちっこい握り飯を半分にしちまったら、お前の腹が空くだろう」
そう言うと、ウミカナは申し訳無さそうにモジモジと言った。
「これしか貰えないから……少しばっかりでごめんよ」
俺は木の洞を飛び出した。
ウミカナは俺を見ても逃げ出すどころかキラキラと光る黒い目をまっすぐこちらに向けてきた。
「ようやっと会えた! なんとまぁ、太陽みたいな髪と目だな。驚いた!」
俺の真っ赤な髪と目を見ても、ウミカナはそんな呑気なことを言って笑う。
弾けるようなその顔こそ太陽のようだと俺は思った。
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