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仕事中毒な妻と何もできない僕
「ねぇねぇ、もう十二時をだいぶ過ぎたよ。そろそろお昼休みにしないかい?」
「……あっ、もうこんな時間か」
僕の言葉が届いたのか、はたまた自分で気付いたのか。眉間にしわを寄せながらパソコンの画面を凝視していた妻が、ようやく顔を上げてくれた。
時刻は既に十二時半。昼休みと呼ぶには、やや遅い時間だ。
「さぁて、今日は……カップ麺でいいか」
「今日は、じゃなくて今日も、でしょう? インスタントばっかり食べるのは体に悪いよ」
僕の苦言は妻の耳には全く届いていないようで、彼女は電気ポットのお湯を再沸騰させると、シーフード味のカップラーメンにお湯を注ぎ、いそいそとリビングのソファへ移動した。
苦笑いしながら、僕もそれに続く。
――新型ウイルス騒動が始まって、既に一年以上が経過していた。それまで、オフィスで沢山の部下を叱咤しながら「鬼課長」として辣腕を振るってきた妻も、今では立派なリモートワーカーだ。
テレビでは盛んに「リモートになって仕事に集中できない人々」のことが報じられていたが、妻はその逆らしく、いよいよ仕事にのめり込むようになっていた。
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