仕事中毒な妻と何もできない僕

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 子供達がまだ小さい頃だったら、度々「嬉しい仕事の邪魔」をしてくれたのだろうが、長男は既に高校生、長女も中学生だ。それぞれ親に負担をかけないように、自分でやれることは自分でやってくれるので、殆ど手間がかからなくなっている。  それが少し寂しくもあり、嬉しくもあった。 「いただきます」  三分が経ち、妻がカップラーメンをすすり始める。中年女性とは思えぬ豪快な食べっぷりは、学生時代から変わらない。  僕は、彼女のそういうところが大好きだった。変わらずにいてくれることは嬉しいが、そろそろ歳も考えて欲しい、とも思う。 「もう少しゆっくり食べたら? 仕事だって、そんなに急ぎじゃないんだし」  そう声をかけるが、妻の箸は止まらない。シーフードラーメンは驚くべき速度で汁ごと容器から消え去り、妻の胃袋に収まってしまった。 「ごちそうさまでした」  律義に両手を合わせて「ごちそうさま」をしつつ、テーブルの上のタブレットを手に取る妻。動画でも観て息抜きするのかと思いきや、なんと仕事関係の資料をチェックし始めていた。  困った仕事中毒(ワーカホリック)ぶりだった。リモートワークになってから、ますます酷くなっている。少し……いや、かなり心配だ。
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