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寝所に潜ませていた銀の花皿を持ち出し、桐吾の前に置いた。指の先程の可愛らしい餅が小山を作った縁起良きもの。
「今日は和喜の目出度き日ゆえ、祝いの小餅を頼んでも誰も訝しがらなかったぞー」
「……三日夜餅⋯⋯?」
「使い古しの皿だと文句を言うなよ。ほかに適当な物がないんだから」
三日などはとうに過ぎたが、私達はこれから新しく生きるのだ。
過去を流し、新しい道を………共に生きる。
「私が三つ食うゆえ、残りはおまえがお食べ。ちゃんと噛まずに呑み込むんだぞ。ほら、あーん」
僅かに開いた口に小餅を捻じ込み、そっと口づけた。
桐吾の目からはまた涙が溢れた。そして喉が動く。
ぱたぱたと涙の粒が落ちる手の甲を握り締めると、私の手の甲にも涙が幾つも落ちて来る。
「死ぬまで共に在ってくれ」
「……死ぬまで……貴方と共に……」
「私はおまえのものだ」
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