リュック・レヴェルトとおやすみの魔法

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 我が名はリュック・レヴェルト。由緒正しきカト族の騎士である。  私の使命は千年続くディーヴァンの村を守り、新しき命を育むこと。たゆまぬ努力を続け、この身を捧げる覚悟だ。 「瞳の色よし、毛並みよし、ひげの向きよし」  水瓶に映る姿を確認し、首に水をなでつけた。銀色の地毛に黒くうねる縞模様、母譲りの毛並みは私の誇りだ。  父から授かった白銀のレイピアは見事に輝いている。我が爪のようだ、と嘆息するとドアが開かれた。 「リュック! 大変だー!」 「何事だ。いかなるときも平静を保てとあれほど」 「早く来て!」  茶色い縦縞のアルフは強引に私の手を引いた。弟子入りしたばかりの新米騎士だが、とにかく落ち着きがない。  赤子の頃から知っていることもあり、敬語も身につかない。参ったものだと呆れたが、アルフは村のはずれにある一本杉に私を連れていった。  村人たちが群がっている。くわや鎌を片手に、三角巾から飛び出た耳を寝かせて何やらのぞき込んでいるようだ。 「リュック様がいらっしゃったわ!」  婚約者のサリアが可憐な声を上げた。クリームタビーの毛並みに花柄のワンピースが映える。  アルフだけでなく、誰もが尾の毛を逆立てている。何事だと思ったその時。 「%$#+! 〇*&Ψ▽§*?」  見上げるほど大きな生き物が訳のわからない言葉を発した。衣服は着ているが裸足で頭にしか毛が無い。手指が長く二本足でしっかりと立っている。 「もしやニンゲンでは」  私のつぶやきに村民が一斉に振り向いた。カト族の古文書に記された太古の種族だ。生息地域は不明、百年前に姿を見せたという記述があったはずだ。  最たる特徴は全身の毛がなく、頭髪が異様に多い。錬金術を駆使し、度重なる戦の果てに滅亡したと言われているが……
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