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「☆ΔΠΩ×Φ!」
何か訴えているのはわかるが言葉を理解できない。困り果てていると老婆が進み出た。
「生きてお目にかかれる日が来るとはのう」
「トコシ婆様」
「まぎれもなくニンゲンじゃの。話ができねば敵味方の区別もつかん。あれを持ってこい」
控えていた従者が「畏まりまして」と告げた。
長毛種のトコシ婆様は我が種族の最年長者だ。百年生きていると言われているが真実は定かではない。
青チョッキの従者が小瓶を片手に戻ってきた。婆様がふたを開けると喉の奥を刺激するような香りが立つ。
「それは?」
「コトルの葉を煎じて煮詰めたものじゃ。口にすれば意思疎通が可能になる」
取り押さえよ、と告げるとチョッキの集団がニンゲンに覆いかぶさった。
無理やり口をこじ開け、瓶から液体を注ぐ。激しくむせた後「何するんだよ!」と叫んだ。
「これって毒? 僕、死んじゃうの?!」
深緑色の液体を垂らしながらニンゲンは言った。
「婆様の薬液に害はない。かなり苦いが」
「苦くてなんぼじゃろ」
そちに任せた、と婆様は従者を引き連れ去っていった。残された私と村民は戸惑いながら顔を合わせる。私はレイピアに手をかけて見上げた。
「そなた、ニンゲンか?」
「人間じゃなかったら何? ていうか猫! 猫が服着て歩いてる!」
「猫ではない、誇り高きカト族だ。あの怠惰な生き物と同じにするな」
「どう見ても猫だよね。なんでしゃべれるの?」
「コトルの薬液を口にしたからだ。そなた、どこから来たのだ」
「どこって、睡眠薬をがぶ飲みして目が覚めたらここだよ!」
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