キッチンとダイニング

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キッチンとダイニング

何か欲しいものあるかと聞かれて 答えたのはチョコレート。 それも大袋に 一つずつキャンディーのように包まれた四角いチョコが沢山入ったやつ と、細かく指定したら 「ガキだなぁ」 そう呆れた顔して言ったけれど お菓子売り場で一緒になって、そのチョコレートを探してくれた。 見つけた時には私よりも喜んだりして 帰りの車の中で一個ずつ、そのチョコを食べたら 何が可笑しい訳じゃないのに 二人して笑った。 . マンションに戻ってすぐ 初めてキッチンに入って、ただ驚きしか無かった。 全く使われた形跡のない、ピカピカのガラストップの三口コンロ なのに、収納棚には道具が揃ってるよう。 シンクの上の食器棚には、見るからに高そうな食器達が並ぶ。 そして想像通りの大きな冷蔵庫。 冷蔵庫を開けたら、本当に水と缶ビールだけ 冷凍庫には、袋に入ったロック氷 本当にそれだけだった。 「いつも何食べてたの」 「まぁ……適当。殆どウーバーだけど」 買って来た食材を台の上に並べてた柊二は、それが普通とばかりに話す。 お金さえ払えばなんでも簡単に届けて貰えるんだから、柊二みたいな人は食事に困る事なんて無い。 「さっきの……女医さんに作って貰ったりしないんだ」 卵に牛乳、なんて この冷蔵庫ではなかなか見れない物を入れながら聞いた。 「カスミはそんなするタイプじゃないからね。 それにされても困る」 あの女医さんはカスミさんって名前なんだ。 「困る?」 「オレね、必要以上に入り込まれたくないんだよ。 女は特に一回寝るとそうなるタイプが多いから そういうのとは二度目は無いし。 カスミとはその辺割り切った関係」 この人の何を知ってる訳じゃないけど なんとなく、らしいななんて思う。 それと同時に 私はこの人にとって 女だとか異性だとか、そんな対象では無いんだと改めて思った。 冷蔵庫のドアを閉めて 台に並べられた食材を見て 「お鍋と、まな板と包丁、それにおたまと菜箸……ある?」 そう聞いたら、どれもあるはずだと 引き出しを開けたりしてゴソゴソと探し出し 菜箸なんて、開封もされていない物が出て来た。 台の上に揃った、食材と道具。 「じゃあ作るから……寝てたら? ……寝れなかったでしょ、私がベッド取っちゃったから」 「今日はたまたまやる事があっただけ。 ……でもちょっと仮眠するかな」 腕時計にチラッと目をやった柊二は 「そこのソファで寝てるから、出来たら起こせよ?」 念を押すように言うと 広いリビングにある、まだ私は座った事のない大きなソファへと行き ゴロンと横になった。
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