ノーガード

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何も躊躇いもなく頷いた私の頭に、手をぽんと乗せて 「イイコじゃん」 まるで、と言うか 思いきり子供扱いされてる。 何も言わずに軽く睨んだら、そんなのはなんの効き目もないように笑って 「まぁ、シャワーでも浴びて来いよ。 部屋着なら、オレの服でもイケるだろ。 探して置いとくから」 話しながら歩き出すから 慌ててその後に着いて行くと すぐ隣の引き戸のドアを開けた。 そこは大きな三面の鏡がついた洗面所で 奥に磨りガラスのドアが見えて、お風呂場だと分かった。 「なんでも適当に使って。一通り揃ってるから」 そう言いながら、大きな三面の鏡に手をかけ 鏡の裏は収納になっているのを見せてくれた。 確かに色々揃っていて、なんとなく女の人の存在を感じたけれど でも、それをあえて口にはしなかった。 振り返った彼は私を見て 「安心しなよ。 オレは、10以上も年下の女には興味無いから」 真正面きって、興味無いなんて 初めて言われた。 でもなんだろう 最初からこの人からは 身体を目的としてる感じは伝わって来なかった。 違う意味では“身体目的”なんだろうけど。 「ちなみにあと何ヶ月でハタチ?」 「……三ヶ月」 12月23日 クリスマスイブイブが私の誕生日。 「なんだ、すぐだな」 「……冗談。まだ三ヶ月もある、だよ」 そう言った私を、今度は鋭い目で見て またさっきのように頭に手を置くと 彼は何も言わずに洗面所から出て行った。 一人残された洗面所の中 三面鏡に映る私 ハタチだと偽って来たこの一年 どれだけ長かったかなんて、偽ってる本人にしか分かりやしない。 日々、偽ってる自分をコントロールするのがどれだけ疲れるか 他人に分かるはずない。 鏡に映った自分をマジマジと見たら 髪なんて湿気で広がって 男物の大きなパーカーを着た 見るからに遊んでる、だらしない自分がいた。 見慣れたはずの姿にため息をついて 借りたパーカーを脱いだら 酷く寒さを感じた。 そう言えば、あの人の名前もまだ聞いてない リサとも、ただの“同業者”という繋がりだけなのか こんな広い高そうなマンションに住んでる あの人は一体何者なんだろう そんな事を考えながら服を脱いで、シャワーを浴びた。 . 熱い温度で少し長めにシャワーを浴びて出たら 洗面台に畳まれたタオルと 黒のスウェット上下が置かれてた。 ふわふわのタオルは凄く肌触りが良くて もう何度洗われたのかも分からない位ゴワゴワの 安いホテルのタオルに慣れてた私には、それだけで特別な場所にいる気持ちになる。 洗面台の三面鏡を開けて裏を覗いて見たら さっきはちゃんと見えなかったけれど 化粧水、乳液、美容液、クリーム 有名なデパコスブランドがラインで並んでた。 どれも使用中なのが分かって 少し戸惑いつつも手を伸ばした化粧品達は リサから香るような、大人の女性の香り ほんの少しずつ手に取って 大人にはまだなれない肌につけてみた。
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