冷たい言葉

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冷たい言葉

目が覚めて 枕もとに置いたスマホを見たら時間は18時15分。 環境が変わっても この時間頃には起き出さなきゃいけないという 身体に染み付いた習慣は持続されるよう。 ベッドには私一人きり 身体を起こして、もう一度スマホを見たら LINEの通知があって、リサからだと分かってすぐに開いた。 『さっき柊二さんが澪の服とか私物取りに来たから バッグに詰めて渡したよ。 柊二さんには私も逆らえないから 澪の事考えずに渡しちゃったけど……ごめんね。 ツラかったらいつでも帰っておいで』 あのリサがいくら年上だからと言っても “さん”を付けて呼ぶなんて そして、逆らえないなんて 柊二という人は、一体どんな立場にいる人なんだろう。 それに、ツラかったら……って? 今までと変わりなく 二時間を目を閉じてやり過ごす ツラくなかったと言えば嘘になるけれど リサの所から柊二の所へと変わった事で そのツラさが変わるとは思えない。 私がやらなければいけない事は同じなのに。 リサからのLINEを開いたままで、そんな事を考えていたら 玄関が開いて閉まる、そんな音が響いた。 スマホを手にベッドから降り、部屋のドアを開けたら 玄関から歩いて来る柊二がいた。 「寝れたか」 「……うん」 「そっか」 柊二の手には大きなバッグ 多分、あれの中身は私の私物だ。 私がそのバッグを見てるのに気付いて 「リサから連絡来たっぽいな」 そう言って、隣の私の部屋のドアを開けて 大きなバッグを中に置いた。 そして私へと目を向けて 「澪、出かける準備して」 「……え?今?」 「そう、今。 ちょっとお前連れて行きたいとこがある」 「連れて行きたいとこ……って?」 「行けば分かる。早く支度しろ」 少し強い言葉で言われて どこへ行くのか気になりつつ 部屋の中に入り、バッグの中から服を引っ張り出し Tシャツと、さっき貰ったパーカーを羽織って 柊二と家を出た。 地下の駐車場に止められてる車達は どれもこれも、誰もが見れば分かる高級車ばかり。 その中の一台に柊二が近付いたら、ピッと小さな電子音。 左側の運転席のドアを開けた柊二は 立ち止まってる私に、早く乗れと言うと車に乗り込んだ。 弱い雨がまだ降り続いてる まだほんの僅か、夜になりきれてない時間帯の街を走る車。 間隔を空けて動くワイパーの向こうを見たままで 何一つ会話のない中 辿り着いたのは色んなテナントが入った 大きなビルだった。
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