冷たい言葉

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ビルの中 柊二に連れられて行った場所はウィメンズクリニックだった。 男の人は入りづらいだろう場所なのに 柊二はなんの躊躇もなく、自動ドアを抜けて中へと入って行く。 出入り口に書かれた診察時間を見たら もう今日は診察は終わってる時間。 時間外の婦人科のクリニックに何をしに来たのか 少し遅れて中へと入ると 受付の女性と軽く会話をしてた柊二が振り返り 「行くぞ」 ただ一言放って、背を向ける。 必要以上の事は私には話さないんだと分かってても ここは、あまりにも情報不足で 思わず受付の女の人へと目を向けたら 「診察室へどうぞ。先生がお待ちですよ」 優しく私を促す。 先に診察室の前に行った柊二がドアを開けるけれど ここは婦人科 やっぱり、私がメインなんだ そう思ったら、少し緊張感が襲って来た。 柊二に背をそっと押され中に入ったら 綺麗な薄い薄いピンク色の診察室の中 イスに座って何かを書いてた白衣を羽織った女の人が顔を上げた。 「やっと来たわね」 そう微笑む女医さんは まるでドラマにでも出て来そうな、絵に描いたような美人。 組んだ細く綺麗な足がスカートからのぞく。 私を見て微笑み 「またこんな若いコ連れて来て」 今度は柊二を見て微笑む。 ……この人は柊二の事が好きなんだな、とすぐに分かる。 自分の母親が変わって行く様子をずっと見てたせいか 女側が好きな男を見る目は、自然と分かるようにいつの間にかなってた。 「いくつに見える?」 柊二が私をイスに座らせながら聞くと 「うーん、そうねぇ。……18か19か……って所かしらね。 当たりでしょ」 さすが、沢山の女性を診察して見て来てる人 あっさりと当ててみせた。 「やっぱり女には分かるのか。男はその辺疎いからな」 笑いながら柊二は 横にある診察台のような所に軽く腰掛けた。 二人の会話を黙って聞いていたけれど その間を遮るように口を開いた。 「……あの。私はなんでここに……」 「何も話さないで連れて来たの?」 女医さんが柊二を少し呆れた顔をして見た。 「別に問題ないだろ。 どうせ簡単な問診だけなんだから」 簡単な問診? 柊二がなんでもないような顔で言った後 「澪、お前これからピル飲め」 「え……?」 腕を組んで、笑いもせず私を見る。 「生理コントロールして貰わないと、オレが困るから」 ほんの少しだけ、柊二は優しい人なのかもなんて そんなふうに思ってた私は 本当にどうしようもないバカだと思った。 「……私、一度飲んだ事あって その時、副作用が強く出ちゃって……」 リサに勧められて、一度ピルを飲んだけれど 酷い吐き気と頭痛に耐えられなくて、止めた過去を話そうとしたら 「飲み続けてたら身体が慣れるらしいから。 その位耐えろよ」 冷たく柊二の口から放たれた言葉に もうそれ以上何も言えなくなった私は 視線を床へと落とした。 「後は任せる。オレ、外で待ってるから」 女医さんにそう言って、柊二は診察室から出て行った。
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