魔法少年は歌いたい

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 まさか今までよりも強力な魔法で私の記憶を奪おうというのだろうか。そんな、せっかく仲良くなれたと思ったのに。おばあちゃんにも頼まれたのに。  一歩下がって身構えていると、宮地くんがスッと杖を構えるのをやめて噴き出すように笑いだした。 「あはは! バーカ、冗談だよ。多分ばあやは俺が上位忘却魔法を使ってお前の記憶を消せることに気付かせないために無理矢理遠ざけたんだろうな。そんなことするより、もっといい方法があるってのに」  宮地くんはそう言うと私に向かって右手を差し出した。握手すればいいんだろうか。おずおずと私も右手を差し出すと腕を伸ばしきる前に宮地くんが握った。そして左手に持った杖を私の手に当てる。それから私の左手に持った木の棒とつないでいる手を交互に見て、私に目配せした。真似しろということだろう。とりあえず木の棒を宮地くんの左手に当ててみると、ボウっと繋いだ手を中心に紫色に怪しく光った。それを確認した宮地くんは満足そうに頷いて朗々とした声で唱えた。 「『これは絶対の真理。今ここに契りを交わす。我はその知を、汝はその心を。互いに一つとして分かち得る』」  突然二つの光の輪が現れて、私と宮地くんを囲むようにくるくると回る。まだ日は落ちていないはずなのに辺りは真夜中のように暗い。何だか肌がピリピリすると思ったら、宮地くんの杖の星が当たっているところに白い不思議な紋様が浮かんでいた。同様に私が持っている棒が当たっている宮地くんの手の甲にも紋様が出ている。  もうこらえきれなくなって、思わず聞いてしまった。 「これは一体何をしてるの?」  無視してそのまま続けるかなと思ったけれど、意外にもすぐに唱えるのをやめて、答えてくれた。 「契約魔法。俺とお前が魔法を介して約束をしていると思えばいい」 「約束?」 「お前の力が俺にも使えるようになるのと同時に、俺の知識がお前に使えるように、つまり、お前が俺の使える魔法を使えるようになるっていう契約だ。お前にはこれから、俺のアドフィー浄化を手伝ってもらう」  突然そんなこと言われても、一体どうすればいいのか。困惑している私を置いて、宮地くんは詠唱に戻った。 「『我が要諦は汝が秘密を守ること。』 ……お前は俺に何か求めることはあるか? やってほしいこととか、逆にこれはしてほしくないってこととか。俺にできることなら何でもいい。それがこの契約を結ぶ上での条件になる」  それで言えば、宮地くんが私に求めたのは、私が秘密を守ることってことになるな。私が宮地くんにしてほしいことか…… ゴホンと咳払いして、宮地くんの真似をする。
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